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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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そのあとの会議の話は、あまりに複雑で専門的な業界用語が飛び交っていて、僕には時々不明瞭だったけど、なんとか終わりまでかじりついて聴いていて、会議はなんと三時間も掛かった。帰る頃には僕はぐったりとしていて、立っているのも疲れるくらいだった。


父さんはこんなことをいつもして、そして他にも仕事をこなし、それから夕食会に出かけていくのか。そう思って、今頃になってわが父の凄まじさを知った。



帰りの車の中で、父さんは僕を今度は後部座席に乗せて、バックミラー越しに僕を見ていた。それは注意深く僕を見つめているようだったけど、家に着くまで、父さんは黙ったままだった。






車が家の庭に入って、玄関まで回っていくと、母がポーチの前に出て僕を待っていた。父さんは「降りなさい。父さんは会社にすぐ戻るから」と言ったので、僕は、「今日はありがとうございました」と言って頭を下げ、ドアを開けた。

「馨」

父さんに呼ばれて僕は振り返る。父さんの目は、いつになく真剣だった。

「お前は大学で経営を勉強しているんだろう?もっと真面目にやりなさい。自分が将来使う手段を探して、自分でも考えることだ」

そう言って、父さんが前を向いたので、僕は車から降りて、近づいてきた母さんに挨拶をした。






その晩、図書館に行けなかったことを美鈴さんにもう一度謝ってから、僕は、会社経営の勉強をもっと真剣にやりたいことや、父に叱られたことなどをメッセージで話した。

美鈴さんは、「それなら図書館での勉強はやめにするか」と聞いたので、僕はやっぱり、「そうした方がいいかもしれない」と返した。


美鈴さんは今度は、「一歩ずついこう!」というメッセージが添えられた、ピョンピョンはねているカエルのスタンプを送ってくれたけど、僕は、美鈴さんが無理をしていないかが心配だった。



だから、「思い出のアルバムを作らない?」という文を送った。