馨の結婚(第一部)(1~18)
「それで、馨さんは水着どうする?家にある?」
僕はその美鈴さんの言葉で思い出して、はっとした。
そうだ!自分の水着のことなんか考えてなかった!そういえば僕も水着を持ってない!
うっかりと忘れていたので、慌てて美鈴さんに「僕も水着なかった。どうしよう…」と言うと、美鈴さんは僕を手招きした。
美鈴さんについていくとそこは、男性物の水着売り場だった。美鈴さんはそこに着くとやにわに水着を見比べ出して、僕が止める間もなく次々と水着を取り出しては、また棚に戻していた。
僕の水着を選んでくれてるんだなと思ったけど、彼女の表情は真剣そのもので、着る本人の僕も、声を掛けられなかった。
やがて彼女は一着のサーフパンツと下着のセットを持って来て、僕の前に差し出す。
「これ。どうかな?」
それは、ネイビーとグレーの大きめのボーダーだった。
「しましま。おそろいだよ?」
そう言って得意げに笑った彼女が可愛かったので、僕も、「うん、僕もそれにする」と返事をした。
作品名:馨の結婚(第一部)(1~18) 作家名:桐生甘太郎