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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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美鈴さんは僕の最後の台詞を聞いて、なぜか急に赤くなった。そうして慌てて下を向いて顔を隠し、もじもじと両手をテーブルの下で動かしていた。



急にどうしたんだろうと僕は驚いたし、でも、彼女が深く悲しんだり傷ついたりはしていないように見えることで、少し安心できたような、それからどこか拍子抜けしたような気分だった。

でも、どうして赤くなるのかは僕にはわからない。

「…どうしたの?」

僕が聞いても、しばらく彼女は答えてくれなかったけど、下を向いたままでちょっと顔を逸らして、彼女は恥ずかしそうに頬をかいた。



「えっと…あの、なんか…今の、プロポーズみたいで、びっくりした…」



美鈴さんはそう言って、真っ赤になった顔を、小さな両手のひらで覆って隠す。それはとても可愛かったけど、僕は自分の言動を思い返して、一気に頬に血が集まるのを感じた。


「ええっ!?そうだった!?」


そういえば、「両親に話せるようになるまで待っててくれ」なんて、そう聞こえてもおかしくないじゃないか!


僕は恥ずかしくて仕方なくて、そこから、なんとか言い訳をしようとして、しどろもどろのまま喋り出す。

「い、いや!そういうつもりじゃなかったんだけど、なんかごめん!急にそんな話しちゃって!で、でも、ほんと、そんな重い話じゃなくて!」

僕が息せき切ってそう叫んでいると、彼女がくすくす笑う声が聴こえてきた。僕は両手を振り回したりするのをやめて、彼女を見る。


彼女は片手を口元に引き寄せ、素直に笑う綺麗な声を小さく響かせ、嬉しそうな顔だった。小さな肩が、小刻みに跳ねる。

それから、彼女は笑うのをやめたあとで僕を見上げて、細めた両目でうっとりと僕を見つめ、ちょっと体を傾けた。彼女の長くてつやつやの髪が、少し床に向かって垂れ下がる。



「だいじょーぶ。そこまで真剣に考えてくれてるの、うれしいよ」



うわあ…可愛い。つい、そう口から出そうになった。


僕は困るほど可愛い彼女を見ていたけど、胸にこみ上げる気持ちが止められなくなってしまった。


「あの…」

「うん?」

彼女はにこにことしたまま、僕を見ている。


「だ、抱きしめても…いいかな…」


僕は、彼女が愛しくて堪らない気持ちでそう言って、今にも彼女にがばと抱き着いてしまいたいのをこらえた。


僕驚いた顔をうつむかせて、困ったようにもっと赤くなる美鈴さんを見つめる。

しばらくすると、「そういうのは、聞かなくてもいいの」と、とてもか細く、震えた声が聴こえて、美鈴さんはテーブルの横を回って、僕の隣まで来てくれた。