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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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期末の単位認定試験はあっという間に過ぎて、そして、満足のいく回答ができたと感じ、僕は他の学生たちと同じように、解放感を感じていた。でもちょっと頭が疲れたかなと思い、その日は美鈴さんと図書館で会う日でもなかったので、早めに家に帰り、少しベッドに横になってから夕食を食べようと思っていた。


その時僕は夢を見た。短い夢だった。

僕は美鈴さんの家に招いてもらっていた。それは可愛らしいカーテンに隠された小さな部屋で、僕は部屋の片端に寄せられた美鈴さんのベッドに腰掛けていた。布団は薄いオレンジ色のカバーが掛けられて目に温かく、ベッドから少し離れたところに白い四角のローテーブルがあり、部屋の隅には赤い引き出しがいくつも並んだ白いタンスがあった。

僕がベッドに腰掛けていると、キッチンの方から美鈴さんが部屋に入ってきて、僕の隣に座る。僕はそれを当たり前に受け止めて、彼女の肩を抱き寄せた。そしてそのまま、僕は彼女のブラウスのボタンに手を掛けたのだ。


「わあああっ!!」


僕は生まれて初めて、「夢から飛び起きる」ということをした。体中から汗が噴き出していて、心臓はバクバクと脈を打ち、僕の喉も脈に合わせて震えるほどだった。

僕はなんとか深呼吸をして気持ちを抑え、汗で湿って張りつくようなTシャツの首元を掴んで服の中にパタパタと空気を送り、熱い体を冷やそうとした。それから、手のひらでベッドのリネンをこすって、現実の感触を必死で求めた。


なんてことだ。こんな夢を見るなんて。まだ僕たちはそんなことをしていいはずないんだから、こんな夢を見たら、美鈴さんに申し訳ない。


僕は夢の中で彼女にしようとしていたことに罪悪感を感じながらも、夢で見た彼女の白い首元を何度も思い出しては頬を熱くして、そしてまたそれを打ち消そうと頑張った。


今度の週末は、彼女の家に行く。







僕たちは土曜日の午前十時に、美鈴さんの地下鉄最寄り駅にある改札で待ち合わせて、僕はあの夢を思い出さないようにと頑張りながら、改札の前で彼女を待っていた。でも、やっぱり楽しみだ。

夢で見た様子とはもちろん違うんだろうけど、美鈴さんの部屋はどんな様子なのかな。きっと可愛い部屋なんだろうなと思って、僕はえへらえへらと笑ってしまいそうになるのを、何人もの人々が通り過ぎていく前で必死に堪えた。


「馨さん」

僕がうつむいて、にやけてしまう頬を下げようと手で押さえていると、目の前には美鈴さんが立っていた。

「あっ、美鈴さん!お、おはようございます!」

僕は慌てて頭を下げて挨拶をしたけど、その様子を見て美鈴さんはおかしそうに笑って、「おはようございます」と返す。

「じゃあ、行きましょうか」

「は、はい!」




道々、僕たちは試験の行方を話し合ったり、来たる夏休みを楽しみに、どこか行きたいところを聞き合ったりしていた。美鈴さんはやっぱり海に行ってみたいとも言ったけど、「でも、暑いからなかなか出かけたくなくなっちゃいますよね、最近は」と笑ったりしていた。


今日の彼女は、細い肩紐の付いた、オフショルダーの白いワンピースを長く足元まで下げて、少しだけ踵の高いサンダルを履いていた。風がそよと吹くたびに、彼女が短い歩幅を踏み出すたびに、ワンピースの裾が揺れた。露わになった肩が思っていたよりずっと小さくて、僕は胸がずっとドキドキとしていた。


五分ほど歩くと、僕たちは小さなアパートの前に着き、彼女は「ここです」と言った。

それはちょっと小さめの古い建物で、横向きに敷地内に収まった二階建てのアパートだった。壁の色はくすんで褪せた黄色で、二階に上がっていく階段が錆びてしまっているのが見える。外廊下なので、すべての部屋のドアが見通せて、一つ一つの部屋は狭そうだった。

美鈴さんについて、階段前に日除けだけがある下に入ると、そこには壁に据え付けられたすべての部屋のポストがあって、その鉄の箱たちのほとんどに表札はなかった。今は、防犯の面からもみんな名前を書くことは減ったけど、それ以上に、「人があまり入っていないのではないか」と思わせるほどに古めかしくて、ところどころに持ち手が曲がってしまっているポストだった。

「私の部屋は二階なんです」

僕たちは階段を上がって、“203”と書かれた札が上に取り付けられたドアの前で立ち止まる。美鈴さんが鞄の内側からキーホルダーを取り出して鍵穴に挿し込んだ。キーホルダーには、小さな白いテディベアのチャームが付いていた。

「入ってください」