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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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馨の結婚(第一部)(1~18)

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第八話 僕の夜と彼女のときめき











僕は園山さん、いや、美鈴さんと想いを通じ合わせたその晩、一睡もしなかった。いや、到底できなかった。まるで最高にいい夢を見ているように、自分の生命に感謝し、彼女の愛に感謝し、それから世界中の幸福を集めて眺めているように、とてもいい気分だった。


夕食も食べられないほど僕は興奮していたけど、気持ちは安らかだったように思う。初めは叫び出したいほどの幸せだったけど、だんだんと「彼女と僕は、確かにつながれている」と思うと、今まで小さな光を目指して暗闇を進んでいた僕は、その小さな光の正体は、太陽のような彼女だったと気づかされた気分だった。


僕は心の中で、たくさんの言葉を彼女に贈ることを考えた。


「大好き」。そうだな、とても好きだ。でも、それだけじゃ伝わり切らない。

「愛している」。うん、それもいいけど、ちょっと僕が言うには、まだ大人になり切れていない気がする。

「とても大切」。そうだ。そうだけど、それだけじゃない。

「誰にも渡したくない」。うん、そうだけど。それを彼女に言うのはわがままでもあるんじゃないかと、ちょっと気がとがめた。

「死んでもいい」。僕はそう思ったけど、何度でも彼女に会いたいから、まだこれは早すぎると思った。

「そばにいてほしい」。でもそれは僕の希望でしかない。

「彼女を幸せにしたい」。それは確かにそうだ。でも、僕にそれができるんだろうか…?



最後の、「幸せにしたい」という言葉を初めて人に感じた僕は、今すぐにはそれができない甘やかなもどかしさと、どんなことでもする決心の強さに揺られていた。



そうして考えまわしているうちに、「彼女を守るために命を捧げられるなら、なんと幸せだろう」とまで思い詰め、そのことの恐ろしさに慌てて我に返って自分をなだめたり、現実に一人の女性を幸福にするための方法について、自分は何も知らないかもしれないと不安にもなった。



そしてまた彼女の笑顔を思い浮かべて、それが少しでも僕のためであるなら、僕はもうその他の幸福への興味を失くしてしまうかもしれないと、幸福に怯えるように、ため息を吐くのだった。






夢想的な夜は緩やかに過ぎていきながらも激しく僕を揺さぶり、僕は涙ぐんだり、熱っぽい頭を抱えて唸ったりして、水すら喉を通らなかった。