馨の結婚(第一部)(1~18)
頭の上に降ってきた園山さんの声は、涙で詰まって震えていた。僕はびっくりして顔を上げる。見れば、園山さんは両目を涙でいっぱいに潤ませて、今にもこぼれそうになるのを必死に堪えて唇を噛んでいた。
そしてついに、ほろりほろりと流れ落ちた涙を園山さんは慌てて拭って、泣きながら晴れやかに笑う。園山さんは何度も、笑い声とため息の間のような嬉しそうな声を漏らした。
え…、どういうことだ…?
僕は、突然目の前で巻き起こり出したシーンをすべて飲み込むことができずに、何を言うこともできなかった。それでも一つだけわかる。
園山さんは、僕の言ったことを、泣くほど喜んでくれたのだ。でも、一体どうして?
僕は早くその理由を確かめたかった。そして、願わくば僕が望む理由でありますように、きっとそうなりますようにと祈る気持ちで、片手を園山さんとの間に伸ばして浮かせ、彼女に聞いた。
「どうして、泣いているんですか…?」
僕がそう言うと、彼女はちょっとおかしそうに笑った。それから、拗ねたように上目がちになって僕をちょっと睨み、優しく微笑む。
「どうしてって…」
彼女は小さな肩を寄せて縮こまり、一瞬俯いたが、もう一度顔を上げて僕を真っすぐに見つめた。その表情には、泣きそうになってしまうのを堪える切なげな眉と、彼女のあの素直な両目、それから満たされた微笑みを作る唇があって、今までで一番美しいと、僕は思った。僕の心臓は、あらん限りの力で脈を打ち、恐怖にも似た期待が僕を襲った。
「私も、同じだからです…」
そう言った彼女は、真っ赤に頬を染めて、それでも僕を見つめ続けてくれていた。
これは、夢か…?
喉が震える。涙が込み上げる。体が思うように動かない。本当なんだろうか。嘘じゃないんだろうか。
「ほんとうですか…?」
僕は、彼女とまったく同じ台詞でそれを確かめ、彼女はやっぱり「はい」と答えて、薔薇色の頬をふっくらと持ち上げて笑った。
「信じられないです…!嬉しいです…!ああ、どうしよう!」
どうしよう?どうしたらいいんだ!僕はそう思って、本当に動揺した。
今日まで自分を支配していた不安や苦しみから、僕は解放された。それから、予想していたものとはまったく違う結果に裏切られたかのように、ときめきを止められず、できることなら今すぐこの場でめちゃくちゃに叫んで、彼女を抱きしめたかった。
でもそんなことはできずに、僕は頭を下げ、「ありがとうございます」と言って、我慢できなかった涙を袖で拭った。彼女は、「私も、本当にありがとうございます」と言って、同じく涙を流していた。
作品名:馨の結婚(第一部)(1~18) 作家名:桐生甘太郎