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ヤマト航海日誌2

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なんてな話を知ってるおれには、この映画はてんでくだらん。〈大和〉は建造費の見積もりに不正があったからダメな船だった、と言わんばかりのスジの運びになっている。

直接関係ねえだろう。それは〈大和〉がダメな船の理由にならんよ。これでは山本56が、山本太郎が56歳になっただけみたいじゃないか。与党の腐敗を攻撃する以外に何の能もない口だけの野党代議士が、与党の腐敗を攻撃してるだけみたいな。

問題の本質とかけ離れたところを突いてる。〈大和〉は決して見積もり額に不正があったからダメ船と呼ばれていたわけじゃない。バカとハサミは使いようで、あんな船でも使おうと思えば決して使えないこともなかったんじゃないのか。

おれがそう思うのはおれの手元に越智春海・著『ガダルカナル決戦記』(光人社NF文庫)という本があり、我らが辻政信がこの攻防戦の際、戦艦大和に山本56を訪ねたときの話が書いあるからだ。これによると56は辻にこう言った。


   *


「海軍がまずいことを仕出かしたガ島で、陸軍を餓死させたとあっては、全く申しわけがありません! よろしい。山本が引き受けました。必要なら、この『大和』をガ島に乗り上げてでも、必ず船団はガ島へ送ります!」


   *


だって。ガダルカナルへの輸送船団の護衛! ならば使えるんじゃないか。〈大和〉と〈武蔵〉で船団を護れば、敵は姉妹の艦橋から見える範囲に近づくこともできないだろう。水平線に頭を出したら途端に46センチ砲弾を喰らうのが明らかで、10に1発これなら当たるわけだからみんな沈められてしまう。

極めて極めて効率的だ。このとき敵は〈ヨークタウン〉と〈ホーネット〉を失って空母は〈エンタープライズ〉のみ。対してこちらはまだ何隻かあるわけだから、〈大和〉と〈武蔵〉で空母を護れば零戦隊をラバウルでなく空母から発艦させられる。帰りは結局ラバウルになるかもだけど長時間――てのはすなわち銃弾を撃ち尽くすまでの間だが、ずっとラクに〈零〉達に空の上で闘わせられる。

ガダルカナルをやってた頃は、なんだかんだ言ってまだ日本が優勢だ。敵の魚雷は射っても進まず、当たっても爆発しないシロモノだ。この頃ならばソロモンの海で〈大和〉と〈武蔵〉は味方を護る姉妹になれた。敵を一隻も沈めずとも、輸送船がみんな島に着いたなら餓える兵士達を救えた。

のではないのか。しかし山本56の辻への約束は果たされず、『アルキメデス』の中で既に「老朽艦」と呼ばれている〈金剛〉に戦わせておいて自分はトラック島の港から一歩も出ることはなかった。

これが理由で〈大和ホテル〉と呼ばれるようになったのである。設備が豪華とかいうだけで揶揄を受けたわけではない。けれどもこの『アルキメデス』は、建造費の見積もりに不正があったから〈大和〉は国を滅ぼす船だと描く。

主人公が数学の天才だという話のために。しかしこれがおもしろくない。クライマックスのはずの場面でわけのわからん数式をただエンエンと書くのが続く。おれもそう言や『敵中3 スタンレーの魔女』で計算の話を書いたけどさあ。真田や南部が天才だという話のために。あれもまったくの嘘だけどさあ。

でも数学が嫌いな人でも楽しめる話にしたつもりだよ。おれの数学ミステリとしては、〈楽天コボ〉に出している『絶対外れる馬券術』をよろしければ買ってください。次のアドレスをバナーに入れてね。
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で、『アルキメデス』だけど、ひどい。天才君の計算がねえ。まあ大ネタをバラすのはよすが、「有り得ねえだろ」と思うしかない。あれを見てあの計算を、本気にするやついるんだろうか。しかもあれをおもしろいと思って見るやついるんだろうか。

まあマンガで読んで本気にしたやつがたくさんいるから映画にしたんだろうけれども、しかしたとえば〈大和〉と〈武蔵〉じゃ、鉄の量が同じでも〈武蔵〉の方がだいぶ安く上がってるだろ。同じ型の二号艦を造るんだから設計費を浮かせられるし、〈大和〉のために作ったものをいろいろ使いまわせたりして……。

だから〈武蔵〉は〈大和〉よりだいぶ安く建造されてる。数字のことはわからなくても軍艦のことならおれはちょっとはわかるけれども、そういう点はどんな計算になるんだ、あれは。

いや〜、ちょっとバカバカしいなと思いました。あの映画をカネを払って見るのは明らかな浪費だ。おやめになった方が賢明かと。



   *



――と、そんなとこだがここまでが例によって長い前置きで、実はここからが本題である。『端数報告』を読んでる人はわかるだろうが、〈帝銀事件〉の話だ。〈筋肉少女帯〉の大槻ケンヂが弁護士の書いた本を読んで平沢貞通は無実だと信じた話を本で読んで、おれは逆に疑いを持った。

それが20年ほど前だが、20年後の今にこれをやっている。大槻ケンヂは、

「ボクはねー、帝銀事件の平沢は無実と思ってるんですよ」

と人に話してその人に、

「そんなもん誰でも知ってる」

と言われたことがあるらしい。そうだ。日本じゅう誰ひとり、犯人と思っているやつがいない。

ひとりもだ。少なくとも、おれは知らない。だからおれはすべてをおれの頭で考えなければならなかった。『端数報告』に借り物の言葉はただのひとつもない。

引用文は多いがそれは借り物と違う。それを〈おれの考え〉と錯覚する瞬間がない。すべてを疑い、嘘を探す。そうしなければあれは書けない。

で、そうやって前にあれに書いたことだが最近のコロナもそうだ。「後からならなんでも言える」と言われる前にいま書いとこう。マスクなんか要らん。「感染の拡大防止」なんて言うのは山崎貴のキムタク古代が「ひとりも死なせない」と言うのと同じで愚の極みだと。

このウイルスは広めた方がいい。ウイルスとの戦いは犠牲を出さずに勝てるものではないのだから、日に何人か死人が出るのはしょうがないと考えるべきだ。そして、人口が一億もあれば日に何人かウイルス性の肺炎で死ぬのはもともと当たり前のことで、去年もその前もその前の年も、ずっと変わらず同じように死んでるだろう。この日本では〈コロナ禍〉とやらは志村けんが死んだ日くらいに実は終わってるんじゃねえのか。

人口が一億あれば日に何人か階段で足を滑らせて死ぬ者がいる。マ・クベでぶりぶりざえもんで『妖精作戦 ラジオドラマ版』で平沢千明の声をあてた塩沢兼人もそうして死んだ。2月、3月頃はともかく、志村けんが死んだ日以降のコロナの死者はそれと変わらん。

数字は嘘をつかないのであり、数字を見れば明らかにそうだろ。コロナの死者の遺族の前ではちょっと言えないことであるがそれが人の運命なのだ。

「階段から落ちて死ぬ人がいるから世の階段をすべて無くせ」ともし言うやつがいたらバカだ。コロナウイルスのワクチンをあまりに急いで作るのは〈信濃〉を無理矢理空母に改造するのと同じようなものなんだろ。それを国民全員に射ったりしたら何万も死ぬ。なら、作らん方がいい。
作品名:ヤマト航海日誌2 作家名:島田信之