犬猫ひつじ玉ねぎ
湿った状態で汗臭くて酸味がかった玉ねぎにしてアンタに何のメリットがあるのよ! このバカタレが!!」
だが玉ねぎは諦めない。 最後の力を振り絞り転がった。
けれど、無理である。 この完全牢獄である冷蔵庫(野菜室)から脱走できた野菜はこの世に一人も存在しないのである。
その絶望感は周囲を見渡すと明らかであった。
大根、ニンジン、は既に意気消沈している。
何度、脱走を繰り返したのかは判らないが戦う気力さえもう無い。
中には反抗的な態度が原因なのか、それとも他の野菜への見せしめなのか、干からびて死んでしまったたピーマンが横たわっていた。
それを見ていると流石の頑張り屋の玉ねぎも絶望した。
全てを諦め運命だと思い自分に言い聞かせるのだった・・・
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~2日後~
「今日こそカレーを作るわよ~~~♪」
どういう訳かは知らないがオバサンによるカレー作りは2日間延期されていた様である。
そのお陰で、玉ねぎの寿命は2日間だけ延びたのであった。
その2日間の間に玉ねぎは生きる為の術を模索していた。
そして気付いた。 時々、野菜が冷蔵庫から取り出されるも何事も無かったかのように冷蔵庫に帰ってしまう事があるという事実に・・・
理由は判らないが、玉ねぎはチャンスだと思い待った。とにかく待った。
そしてチャンスが巡ってきた。
死ぬか生きるかどちらに転ぶのか判らぬチャンスだが玉ねぎは、そのチャンスに全てを掛けた。
ラップに包まれたせいで、体力は限界に近い。歩ける(転がる)行動範囲も恐らく10mくらいしかない。
それでも玉ねぎは走った。とにかく走った。
そして・・・
玄関先で力尽きた。
全てが終わった。 オバサンに見つかるのも時間の問題だ・・・
全ての希望を投げ出したその時、
何者かが、声を掛けて来た・・・・
だが、疲れて意識が朦朧していて、誰かは判別できない。
だが、とにかく玉ねぎは叫んだ。
「助けて・・・オバサンに食べられてしまう・・・」
気付くと玉ねぎは、ある小屋の中に居た。
小屋の中では、犬が一匹、警戒しながらこちらを見ていた。
「君は、あの時の犬さんではありませんか! そうですか、なるほど、貴方が私を助けてくれたのですね。」
感謝の弁を述べる為に、玉ねぎは犬に迫る。
「や、やめてください~~~~(汗 僕は玉ねぎ駄目なんです。 ニオイを嗅ぐだけで涙が出るのです~~~(泣
玉ねぎは互いに程良い距離感を保ちつつ、会話を始める。
玉ねぎは、数々の礼を言い残した後に切り出した。
「私はこれから行く当てがありません。
けれど、だからこそ楽しいのです。
私は玉ねぎとして生まれて食われる事を運命付けられていましたが、これからは違います。
自由に転がり続けて何処まで転がり進む事ができるか試したいと思います。 生きる事をさえぎられた野菜室の彼らの分まで、世界を見てみたいと思います」
玉ネギはそう言い残し、犬小屋を後にしました・・・
~玉ねぎ暦10年後~
玉ねぎは海を超えイギリスのロンドンに居た。
そこで玉ねぎはストリートチルドレンという恵まれない子供の為に身を捧げる事で、自分の存在価値を示しましたとさ・・・めでたしめたし~~
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今日は何時もと何かが違います・・・・
そうです。今日は犬と猫は車でドライブ中なのです。
(要するに猫と犬の飼い主に連れられて車に乗ってる)
そうして二匹が辿りついた場所は、緑が一面の大地である羊の牧場でありました。
二匹は車から降りて思うように駆けていくの・・・だが犬は空を飛んでいく・・・
いつか起きた現象の再来・・・時速100Kmはあろう猛スピードで何か激突した。
それは・・・
あの時の羊だった。
犬は、またしても羊に助けられた。お礼の弁を述べようとするが・・・
つかの間、羊がマシンガンの様に愚痴を吐き出した。
どうやら羊は、これから食肉工場でバラさてしまうのである。
犬は、つい、よだれを垂れ流します。
犬ですから、つい・・・ね?
友情として有るまじきイケナイ妄想してしまいました。
ですが勿論、犬は羊を助けます。命を助けて貰った恩があるから・・・
けれど、どうやって羊を助けたら良いのか判りません。
羊は大きな柵の中に閉じ込められているし、頑丈そうな柵は犬の力では壊せません。
と、そこへ猫がやって来ました。
「誰やこいつ?」と言わんばかりに猫は羊に警戒しています。
そりゃそうです。 猫は生まれて初めて羊という生き物を目撃するのだから・・・
犬は猫に事の成り行きを説明しました・・・
猫は言いました。
「飼い主に捨てられる瞬間、必ずその家(柵)の扉が開くからその隙に逃げろ」
一同は猫の助言を疑う事無く信じました。
なぜ、猫の言葉を疑わないかって?
「それはね・・・動物だからピュアなんですよ」
一体誰の語りでしょうか・・・全く物語と関係の無い人の声が聞こえたような・・・
まあ、その話題は置いといて3匹はチャンスが現れるまで待ち続けました・・・
そして扉は開く・・・
だが、羊は成すすべも無く連れて行かれようとしていた。
犬は思わず関係者らしき者達へと吼えた。 吼えまくった。
逃がしてあげてと頼んだ。
だが、一向に聞き入れて貰えない。
そこへ、猫が飛び込み関係者らしき者達へと噛み付いた。
猫の噛み付きは成功して関係者達は怯み、その隙に羊は逃亡を図りました・・・
羊は走った。とにかく走った。
行く当ても無く走り続けた・・・
人目に触れ何度も捕獲のピンチにさらされながら、でも、やっと一息付き静かな陸橋の階段下に腰を下ろした。
と、そこへ何者かがやってきました。
「だだだだ! お前さんは、だだだだだ誰だ!!??? そそそこ、そこは俺らの縄張りじゃけんのう!」
その何者かの正体は、3匹の野良猫でした。
3匹は酷く羊を警戒していて攻撃態勢に入っています。
「お願いしますだ~~~オイラをかくまって下させ~~~」
羊は事の成り行きを3匹に説明しました。
「無理だ! お前の様なデカイ図体だとコッチが危ないんだ! 人に見つかったら俺らだって保健所送りにされて殺されてしまうのだからな!」
猫達は、そう言い放ちながら、羊の体をどつきました。
「やめて~~~~~痛い・・・やめて~~~」
羊の悲痛な叫びが、陸橋下に木霊する。
「なんこれ~~~?? めっちゃきもちいぃ~~~♪」
「本当だ!、このフサフサめっちゃ気持ちえ~~~しかも暖かい~~?」
「何!? ほんなら俺も~」
「あへぇえ、あへぇ~~くすぐったいよ~~~~」
3匹は、羊の体毛が御気に召したようである。