短編集 くらしの中で
その三
中年に入ると子供の問題行動を取り戻すのに10年余り奔走、娘の結婚出産、離婚、その後夫は脳梗塞で大荒れ、そんな中老いた母親のこともあってあっという間に年月が経った。
ひとりで子育てするようになった娘の支援に五時間の距離を行き来すること10年あまり。
経済援助、労力全投資した。産まれたばかりの孫は愛しくて、日一日と生長するのが愉しみでそれが活力ともなっていた。
その頃から私は血圧が高くなって薬を服用していた。孫の世話に行く朝に電車の中で血圧を測るとかなり高い時もあったけれど、行けば何とか働けた。
脳梗塞で虚血性認知症を併発していた夫は自宅の母屋で自炊しパソコンで囲碁をしながら一人きりで過ごしていたし、別棟の母も頑張って自炊していた。
母は96歳まで生きて、その間経済的には多額の援助をしてくれた。
母が亡くなり夫は一人で留守番をする期間があったが、ひとりで買い物や料理をする生活を楽しんでいるようでもあった。
母も夫も晩年は重荷ではあったが金銭面と対社会面では大いに世話になった。
今、娘二人は強い大人として自立し、孫も高校生になって娘の生きがいになっている。
一方私は広い敷地の小さな別棟で何の心配もなく一人暮らしを満喫している。
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子