短編集 くらしの中で
その二
私の娘二人が都会へ遊学をして家族が大人三人だけになった時自宅周辺に幹線道路が通ることになり移転を迫られることになった。
転居先をあちこち探して落ち着いたのは観光名所が近い住宅街の一角で周辺には小中高の学校もいくつかあった。
生まれ育った土地を離れることを憂慮していた時期には、生家がなくなったらどんな気持ちになるのか、気が変になるのではないかなど杞憂していたが、新しい場所に住んでみれば近所の家族との距離感や買物をする店が多くあること、それに何より病院も近くてとても良い環境だったので前の家のことを思って寂しく思うことはなかった。
別棟に住んでいた実母は、何が良かったかと言って一番良かったのは、私に良い友達が来るようになったことだと言っていた。
今まで卒業以来会うこともなかった高校の同級生との触れ合いができるようになったということだ。
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子