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短編集 くらしの中で

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その三


今の家に来てもう三十年近く経つが、挨拶程度だった近隣とも会えば話ができるようになっている。
年上の女性とたまに話をすると、以前は華やいだ話をしていた人なのに今ではいつも死ぬる呆けるなどの気弱な話をする。
又たまに会う友達の中にもそういう話をする人が多く、前向きな話をする者は限られている。


20年前に夫が病気で倒れたとき、娘達が勧めてくれたのはパソコンだった。
右も左もわからないパソコンをこつこつ学んで、今ではブログを書いたりSNSの友達とコメントし合ったりするまでに馴染んでいる。

その中で感じるのは、リアルの友達とSNSでの会話のずれである。

SNSの人達は老いも若きも前向きだ。
それに年齢や性別に関係なく友達として話ができるので沢山の活気ある情報が入る。中でも年下の男性には色々な知識を教えてもらい、好みの音楽のジャンルも広がった。

子供の時から習っていたピアノからは必然的にクラシックを好むようになっていたが、彼らからyou tubeにアップされているミュージックを好むようになり、又数年前からはエレキギターを引く方にも出会えてエレキも大ファンになった。

私の周りにはこの年齢でエレキが好きな女性は恐らくいないだろう。

将来の生活設計を考えることは必要だけれど、死ぬることや年を取ることばかりのマイナス思考で生活していたら、呆けなくでも良い天命でも呆けちゃうのじゃないかな。

朱に交われば赤くなる・・しかり。
自分にとって元気になれる人達と交わりたいものだ。


作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子