短編集 くらしの中で
その二
自分自身も母子家庭で育ち、小学生の時母親が私を一人残して県外に出ていた期間は祖母と寂しい暮らしをしていた。
たしかに私は普通の家庭の子とはちがう育ち方をしている。
そんなときたまに優しくしてくれる人に遭遇するととてもうれしかった。
男は外に出ると七人の敵がいると言われるが、子供の私とて力強い家族の中でほっこりと育てられた経験がないのでずっと外界の敵に晒されて成長したようなもんだ。
母親の職業柄金銭的に困ることはなかったが、それも又嫉妬の標的になりいじめ紛いのことをされたことも多々ある。
田舎の学校では貧乏のほうが居心地が良かったのかもしれない。
人には人の、その立場での厳しい状況があるので、私も他人のことはわからなかったし、いじめをしてくる子たちも私の孤独な気持ちはわからなかったのだ。
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子