短編集 くらしの中で
手を差し伸べる その一
親友とまではいかなくても、身近に辛い思いをしている人に思いを掛けて世話までしてしまうのはいつものことだ。
人は私を優しいというけれど、自分が優しい人間だからとは思っていないのだが。
これまでよろず相談に乗って、身近な人で怪我をして動けなくなった人に或る期間物を提供したり、バーチャルの友達にも身体が弱く失恋して立ち上がれない女性が寝床の中から電話してくるのを聞いてあげたり、仕事が無くなって生活が困っている人に支援物資を送ったり色々してきた。
見返りを求めてしているわけではないので、その人達は元気になったり食べるに困らない状況になるとさっさと私の元を離れて行った。
リアルでは私の援助が要らなくなった途端思いもかけない仕打ちをして来なくなった女性もいる。
だったらほっとけばと人は言うが、そういう人をほっとけないのは、自分が思春期に長い年月病気をして無念の青春時代を送ったこと。娘が離婚して付き添って見知らぬ土地に引っ越して来たとき、誰も親切にしてくれる者はおらず必死になって共に赤ん坊を育てた十数年。
それらのことが私の気持ちの中にあって共感しているのかもしれない。
作品名:短編集 くらしの中で 作家名:笹峰霧子