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光は空と地上に輝く(3)結

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三人で話しても結論は出なかった。家に帰って一日考えることにした。

     ~長旅四日目~

三人で集まって、私たちはすぐに流架のお母さんのもとへ向かった。着いてすぐ、直樹が流架のお母さんに聞いた。
「お姉さん以外で昔、流架と仲の良かった、でも今この世にはいない人は誰ですか。」
その返事は、何も予想していなければ衝撃的なものになるはずだった。でも、すでに予想はついている。それは、その人は…
「翔という名前の子。本名は成海翔。主人の友達の子。」
信じたくなかったその答えに私たちは下を向いた。
「翔くんが死んでから、翔くんのお父さんはアメリカに渡って翔君がかかった病気の研究をしてる。でも流架は未だに翔くんが死んだことを知らないの。教えてないから。翔くんは入れ違いでアメリカで生きていると思ってるの。そして、主人はその研究を一秒でも早く終わらせるためにアメリカに残って、共同で研究をしているの。その研究が終わったら全員で翔君のお墓参りに行くことになってるの。翔君のお父さんが私たちにお願いしてきたの。翔君が最後に人の役に立てるならといって身を捧げたこの研究が終わるまでは、流架には黙っていてほしいって。」
私たちは複雑な思いで流架の家から出た。流架のお母さんも私と翔の関係を知らなかった。
二時間前からこうなる気がしていた。

~二時間前~

「夢、みたよ。夢で言われた。四つ目のヒントは、空」
「空?どういうことだろう。何かわか…香歩?どうした?」
空。やっとつながった。やっぱり「ここ」は「空」だった。流架はあのとき私と空を見上げた。でも気持ちは全然違ったんだ。あの時流架は単に空を見ていたわけじゃなかった。流架は私と話しながらアメリカにいるはずの翔のことを考えてたんだ。たぶんお姉さんのことも。でも翔はそうじゃなかったのかもしれない。そして、翔は…。気づいた私はすぐにふたりを外へ連れ出した。
「どうしたの香歩?何か分かったの?」
「ねぇ、空見て。どう?」
「どう?って青いな、澄んでるなくらいしか思わないけど?」
「じゃあ、本当に天国が空にあるとしたら?」
直樹がすぐに気づいて答えた。
「お姉さんか。」
「それだけじゃないかもしれない。」
「どういうこと?」
「もうひとり、私たちがよく知ってる人がいるでしょ?」
「それが翔だって言うの?流架と翔に繋がりなんか…」
「流架の家にあの公園の写真があったの。その時に言ってたんだ。『お父さんとその友達と行った』って。それに『お父さんの友達に子どもがいた』って言ってた。」
「やることは決まったね。流架のお母さんに聞きに行こう。」
私の家に戻り、結論は出た。
「翔のふりをしよう」
「うん」
「頼むよ。僕は翔くんの事をあまり知らないから他の事を手伝うよ」
「よし、やろう!」
      ~長旅五日目~

すぐに三人で翔の家に向かった。お母さんだけは今、日本に住んでいる。流架との思い出を細かく知るために。チャイムを押すとお母さんが出てきた。
「はーい。え?遥ちゃん?それに香歩ちゃんまで。どうしたの?とりあえず入って」
一通り説明すると、翔のお母さんは快く協力してくれた。早速流架にLINEした。
翔 「久しぶり」
すぐに既読がついた。
流架「どうしたの?ずっとLINE来なくて心配してたんだよ」
翔 「ごめんごめん」
  「流架に会いたいんだけど会えない?」
  「ごめん、今はちょっと」
翔 「なんで?」
流架「事故って入院してて」
翔 「大丈夫かよ」
  「ならしゃーないな」
  「元気になったら俺の家来て」
  「また前みたいに話そう」
流架「もちろん」
私が翔のふりをしてるとは思ってなさそうで安心した。
流架が退院したのはそれから五日後の事だった。

     ~長旅一〇日目~

五日間LINEし続けた。それでめ私たちの事を思い出すことはなかった。そこで、賭けに出た。
翔 「前言ってた彼女とさどっか行きたいんだけどどっかいい場所知らない?」
流架「どこに住んでるの?場所によってはかなり遠いよ?」
翔 「彼女は流架の近くに住んでるから遠くてもいいよ」
流架「ならあの公園かな」
翔 「懐かしいな」
  「じゃあ遊びに行ってくるわ」
流架「楽しんで」
私たちは本当にそこへ行った。そしてあの場所で写真を撮って送った。
翔 「ここ覚えてる?」
流架「もちろん!送ってくれてありがと」
アメリカにいると思っているはずなのに、流架は住んでいる場所に対しても、日本の公園の写真に対しても何も言わなかった。私たちは気づいた。翔が死んだ頃の翔の記憶も失っていると。
だからか、写真を見ても記憶は戻らなかった。

     ~長旅一一日目~

珍しく流架からLINEが来た。
流架「会いに行ってもいい?」
翔 「ごめん今日はデート入ってて」
流架「あ、じゃあ楽しんで」
翔 「楽しんでくるわー」
私たちは流架に内緒で流架のお母さんと会っていた。夢で最後のヒントが告げられたから。最後のヒントは、真実を知ること。
「お願いします!」
「分かりました。協力します。あの子のためでもあるから。お願いね」
「ありがとうございます」
私たち三人と流架お母さんの四人で、四日後にそれを決行した。

     ~長旅一五日目~

「メールを送ったら入ってきてね」
「わかりました。」
 流架のお母さんが流架に事実を話し始めた合図だ。
 あの時流架のお母さんは翔の死を告げることを受け入れてくれた。四日かかったのは、流架のお父さんと翔のお父さんが帰国するためだった。研究は終わっていないが、承諾してくれた。
 一時間ほど経ってからメールが来た。私たちは家に入った。翔が偽物だと知って、その偽物が現れるのだから、出ていけと言われる気がした。それも覚悟の上でリビングの戸を開けた。予想通り、流架は私たちを見て、冷たい視線で、ただ一言、誰?と言った。流架にそう言われると泣き叫びたくなる。でも、耐えた。前みたいに流架と過ごせない方が悲しいから。すると流架のお母さんが言った。
「流架、ちょっと出かけるよ」
 着いたのは、翔のお墓。私たちは車の中で待ち、電話を通して流架とお母さんたちの会話を聴いた。翔は死んだと知っていても辛いのに、流架は泣かなかった。まだ死んだと信じられないのかもしれない。しかし、翔のお父さんが真実を打ち明けた。翔は難病で死に、私は止めたがそれでも最後には研究に身をささげたこと。そして翔の、流架君には自身の死を告げずにずっと笑顔でいてもらいたいという願いを尊重して、流架君には告げなかったこと。他にも翔の死について真実を話した。そして、流架のお父さんが「本当だ」と言ったことで、そして、お墓の横を見たことで、流架はとうとう泣き始めた。見てるのが辛かった。そして、「翔」に話しかけた。
「先に死ぬなんてひどいよ。翔の彼女は俺が守ってやる」
 いつもは俺と言わない流架が俺と言った。思いの強さが伝わって嬉しくて飛び上がりそうになった。でも同時にいつもの流架ではないこと、そして私がその彼女だとわかっていないことを考えると悲しく感じた。
 
次は事故の現場に向かった。