小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

光は空と地上に輝く(3)結

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

車から降り、一台のトラックが通りすぎた瞬間、流架の様子が変わった。両手で少し頭を抱えてから、形相を変えた。
「そうだ。あの時。」
そう呟いてから目の色を変えてお母さんに言った。
「母さん!今すぐ香歩の家に行って!あの日、香歩が先に帰って、後で学校出てから走って追いかけて、そしたら香歩が見えて。でも車がブレーキかけないで坂下りてて。香歩は!大丈夫なんだよね?」
 あの時暗くなったのは、流架だったんだ…。私を助けるために…。車の中にいるように言われていたけれど、電話を通して聞こえた声に反応して私は駆け出した。止めようとしたふたりの手を振り払って、駆け出した。それに気づいた流架が私の方を振り返って、泣いた。そして私の方へケガをした足で必死に走ってきた。流架は走って向かってくるのが私だとわかっている。最高の瞬間。泣きながら走り、そして、抱きついた。流架が怪我しているのを忘れて。流架の存在を体で感じた。
「流架!よかった!思い出してくれて…」
「ごめん香歩!生きててよかった…」
「私のためにありがとう」
「目の前で彼女が死ぬの見たいわけないでしょ?守るに決まってるじゃん」
「バカ。流架が死んだら私生きてられないよ」
長い間抱き合っていたけれど、ふたりが車から降りてきて、少し冷静になって気づいた。流架が少しふらついていた。
「あ!ごめん!足怪我してるの忘れてた」
「ちょっと倒れそうで危なかった」
やっと、私を見て笑う流架を見れた。
「ふたりも流架のために頑張ったんだから」
「遥!直樹!ごめん!」
「やっといつも流架に会えた。よかったよ。香歩なんか死人みたいだったんだから」
「言わなくていいから!やめてよ遥」
「おかえり流架。あの秘密言っちゃった」
「え!?直樹が言うとは思わなかった。でも受け入れてくれたんだね」
「うん。この一ヶ月の事色々教えてあげるよ。後でね」
「すごい話がいっぱい出てきそうだね」
それから四人で私の家で語り合った。みんなの秘密を知って、その度に反応する流架が戻ってきた。四人で笑いあう日常が戻ってきて嬉しかった。
「ねぇ、そういえばさ、何で花火嫌いなの?」
「それここで聞く?まぁいいか。もう秘密じゃないし。直樹は耳塞いでもいいよ。お姉ちゃんが死んだ日が花火大会で、死んだって聞いたと同時に花火が空に上がったんだ。だから花火見ると泣いちゃいそうになって、香歩に聞かれたら直樹との秘密ばらさないといけなくなるでしょ?だから嫌いって嘘ついて行くのやめた。まぁもう秘密じゃないから来年は全員で行こうよ」
「えーふたりで行ってきなよー。私は直樹とふたりの後つけて「ザ!バカップル!」ってかんじの写真撮るから」
「絶対いや。遥なら本当にやりかねないし」
「人をなんだと思ってんの?」
「ごめんごめん」
「そういえば、香歩、胸ポケットの本読んだんでしょ?あとがきまで読んだ?」
「あ、まだあとがきまで読んでなかった」
「読んで。絶対に読んだ方がいい」
私はあとがきを読み始めた。………。読み終えたとき、私は全てを理解した。同時に涙があふれて止まらなくなった。
あとがきにはこう書いてあった。
 
  「この小説は私のデビュー作とともに、私の弟の友人が、自身が死ぬのを悟り、愛する人Kに思いを伝えるべく私が代理で書いたものである。タイトル「K&K」は彼らのイニシャルであり、この本の本文最後の言葉、「今までありがとう!幸せにね!」は実際に彼がKにあてたものである。」


~笑顔の日常~

四人で笑いあって過ごした高校生活も終わり、四人別々の学部ながら同じ国立大学を卒業し、あの事故から一〇年。五人であの公園に来た私たち。
「ふたりとも幸せだね。流架と香歩ならうまくやっていけそう」
「いやいや、やっていけそうじゃないから。うまくやっていってもらわないと。それにかわいい子どももいるんだし」
「そうだね。遥と直樹も仲良くね」
ふたりとも照れるのでつい笑った。流架も笑った。すると遥が話を逸らすように言った。
「高校生の頃は香歩がママ、パパって呼んでたのに、今はもう香歩がママって呼ばれて。この幸せもんが!」
 大学を卒業してから一年ほどで私と流架は結婚した。一方で直樹は、あの事故から二年後、彼氏と別れた遥に告白して、何だかんだありながら来週結婚式を挙げる。遥と直樹は二人で幸せに暮らしている。私たちは結婚して一年後に子どもを授かった。今では四歳の子ども、私、そして私の永遠の友達の五人で、翔と流架のお姉さんと直樹のお姉さんを見上げに来るようになった。
「これからは遊ぶってなったら子どももいるから五人か」
「そうだね。遥がいたずらされる方になるかもよ?」
「楽しけりゃいいよ。ホントはいやだけど…」
「ママーはやくー」
「よし、じゃあてっぺん行こっか、春翔(はると)」
「うん!」
 私たち五人は丘に寝そべって空を見上げた。そして、翔や流架のお姉さん、直樹のお姉さんと語り合った。
流架の記憶が戻ってから翔が言った五つ目のヒント、いや、ヒントという名の翔の願いを叶えると空の太陽に誓った。
その時翔の声がした気がした。「流架のそばで、幸せに生きてね」という願いを伝える声が。
そして周りを見渡すと、

地上には流架という太陽が、空には私たちを見守るように太陽が一つ輝いていた。


FIN