引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
竹内はしばらく考えて、「たとえば無限に擦ったら、宇宙の果てまで紐が伸びて壁を突き破ってしまう。なんてことありますかね?」
試しにマントを装備して擦るが、紐に対してマントの力が発揮されない。高速に擦れるが紐は伸びない。魔法アイテム同士は性質が同じだから打ち消し合うとかか?
竹内
「そういえば科学の実験だと、擦って静電気を発生させる場合、違う物質同士を擦らないといけないんです。」
「竹内さん。やけに詳しいですね。」
「はい、実は高校で先生してます。静電気実験では、
同じ物質だと物質の持つ電子数が同じになろうとして、電気が安定しようとして熱を生み出す、その代わりに電気が放出しなくて……」
「竹内さん、ちょと難しくて分からないので、結論をお願いいたします
「プラズマが紐を 成長させます。電気に反応して紐が伸びてる可能性がありますので」
「では、電気を、生み出せばいいのですね」
と、いっても清十郎は思いつかなかった。
竹内は生徒をなだめるように問いをだした。
「清十郎くん、無限大のエネルギーが発生してる自然現象ってわかる?」
「清十郎くん、無限大のエネルギーが発生してる自然現象ってわかる?」
ブラックホール?
竹内
「そう、だから、ブラックホールに投げ込めば無限大に紐は成長する」
清十郎は早速、ブラックホールを探した。マントの力(スピード)は反射神経も思考も速くなるから、あっという間にブラックホールを見つけた。早速、紐を放り込んでみると
清十郎は後悔した。
紐が伸びてるのはいいが、不規則に回転していて、ムチのように清十郎を襲う。紐が魔法属性だから、魔法のマントの防御力を相殺している。要するに生身の人間が紐でムチを打たれる痛みに近い。
紐はブラックホールから飛び出した。魔法性のアイテムだからかブラックホールの吸引力の影響を受けつけない。安定してブラックホールの中に留めるには紐を持って中に入るしかない。
ブラックホールに入った清十郎は紐の真ん中を持った。そうすることで、紐は安定してどこまでも伸びていった。
紐の先が鞭のように暴れまわる。紐は惑星や銀河を次々と破壊していく。
宇宙が滅茶苦茶になっていく光景を竹内は見ていた。破壊の揺れと、爆発から伝わる熱波に、次第に自身の身に危険が及ぶと感じた竹内は清十郎を残して一先ずログアウトした。
しばらくして清十郎はブラックホールの外を見てみた。
塵やガスばかり。
なにもかも破壊されてる。前回、竹内さんが銀河を破壊してまわったけど、それをも超える破壊力だ。
継続してブラックホールの中に紐を入れ続けると、宇宙ごと膨大させて破壊するかもしれない。そしたら竹内さんの見た黒い点(ゴール)にたどり着けるかもしれない。
清十郎はブラックホールの中心で紐を支え続けた。
紐は伸び続け、宇宙を埋め尽くし、果ての壁を破裂した。内側の宇宙に漂ってた塵は、外側の更なる広い空間へと拡散していった。
竹内さんが見ていたという黒い点は、どこにあるのだろうか。
何も見えない。調べても完全な無が広がっているとしか思えない。
清十郎はネットの攻略サイトを調べた。紐のイベントはただ世界を破壊して気分を爽快にする為のアイテムらしい。
一人がブラックホールに入り一人が世界の破滅を見て楽しむ。紐はゲームの進行とはなんの関係もないアイテムであった。また同じくマントを使っての二人一組でする宇宙の果て壁を突き破るイベントも、宇宙爆発を楽しむもので、その先にプレイヤー同士が繋がる様なイベントは無いのだそう。
攻略サイトによると、ダンジョン内にログインしてすぐ、真下の地上に降りると、ちょうど街の上にでられるそう。
その街は特殊なバリアが張られている設定にて、魔法のマントからの破壊攻撃も受け付けない。オンライン上のプレイヤーたちが必然的に集う街になっている。
◆
街
街の風景は決まってないそうで、西洋式か、中世ヨーロッパ調か、現代世界的なのか、近未来型なのか、プレイヤーの好みに合わせて脳内に投影される。竹内がSF未来型な世界が好きなら、竹内にはそう見えるし、清十郎が江戸時代が好きならそう見える。プレイヤーそれぞれ見ているものは違えど、不自然なく互いに干渉もしあえる世界、それがこの街の特徴になっている。
「らしいですよ? 竹内さん」
清十郎は公式サイトを見ながら答えた。
竹内
「清十郎さん、あれは、なんでしょうか?」
清十郎には空飛ぶドラゴンに見えるが、竹内には宇宙戦艦に見える。それぞれモンスターとの戦闘に役立つ存在(アイテム)として、互に違和感なく受け入れられる様に配慮されている。
もし清十郎が、「あれはドラゴンだよ?」と竹内に言っても、翻訳されて竹内には「あれは宇宙戦艦だよ?」と聞こえる
街は盛大なパレード状態で、初心者、いわゆる新規のプレイヤーを盛大に祝うようにプログラムされている。美味しい料理や酒がたくさん用意され、美男美女が歌ったり踊ったりする。
一応、美女にはムフフに触ったりもできるが、他のプレイヤーの目もあるので、 普通はやらない。しかし、こっそりすることは可能なので、万が一最中を見てしまったら、それとなくマナー違反であることを忠告しよう。何もせず黙認するのもマナー違反である。
そんな注意書きが街の入口に張られている
街に入って直ぐ、清十郎と竹内は花束を持った子供達に迎えられた。子供達も勿論プログラムなので感情はインプットされていない。しかし花束を受け取ってみて、実際の人と見た目にも仕草にも違いが無いと感じた。
このVRゲームのクオリティは、以前に清十郎がやってたゲームとは明らかに違う。このゲームの存在意義はもしかしたら、性犯罪者に対する抑止なのかもしれないと思った。ロリコンが子供を犯してもこの世界での仮想キャラであれば合法であるし、パレードで用意されされてるセクシーな美女たちも、犯罪者予備軍に対する対策を兼ねているのかもしれない。
性に関する考察をしていた清十郎は、ふとプレイヤーが犯される可能性を考えてみた。たとえば清十郎が突然、ふいに竹内の唇を奪うことは可能だろう。しかし犯すとなると、ログアウトして逃げることはできるわけで
しかし清十郎はプレイヤー狩りをしていた時に気付いていて、相手がログアウト出来ない状況にできることを知っている。気絶させたり、羽交い締めにして、ログアウトボタンを押させないようにできる。
だからといって、性犯罪が起こるわけでもないだろう。仮想キャラが犯罪抑止力になるだろうし、参加者の身元はサービス会社が管理しているだろうから。
万が一事件が起きても、あくまで事後だし証拠はログとして残るだろうから、罪には問えるだろう。しかし、バーチャルの世界での性犯罪は法的に裁けるのか?
清十郎はネットから情報を探した。
どうやらバーチャルレイプでも事件とし認めらるそう。
清十郎は少し安心した。年頃の女性を守りながらの旅になると神経を使いそうだからだ
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中