引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
寺井の言った住所は清十郎の自宅の住所だった。政府と戦ったりカーチェイスしたり、清十郎と一緒に海へ酸素ボンベを背負って飛び込んだ事は幻ではなく、実際に起きた事だと悟った清十郎。
清一との冒険の思い出が蘇り、心を温めた清十郎。家に帰りたくなった。だが
清十郎
「寺井さん、もしかして、わたし達は永遠にこの世界に閉じ込められたのでしょうか……、あの時はVRの世界は実はゲームではなくて、魂を異世界に飛ばして、その世界をゲームの電脳世界であるかの様にプレイヤーを騙していました。このゲームもやはりゲームではなくて、異世界なのでしょうか……」
寺井
「ここが異世界かゲームの世界か、考えても真実は分からないが、もし異世界だとしても俺たちは、これまで現実世界と繋がれていたんだから、これから先の未来で繋がる可能性だってある。どっちにせよ、この世界で生きていけるなら、現実世界と繋がるチャンスがあり続ける事になる。もし今の体か魂のみだとしても、衣食の必要も排泄の必要もない、とても便利な体ですよ? 」
寺井は清十郎を慰めたかった。
「上手く言えないし、赤の他人に言われたくないだろうけど、俺は清十郎さんを、親の様に思ってるんだ。」
「親?」
「家庭の事情でさ、俺は親のことを殆ど覚えてないんだ。記憶がないから、親ってどういうものか分からなかったけど、清一が、どういうものか教えてくれた。清一の親父さんが、たまたま清十郎さんだったというだけで、きっと清十郎さんでなくても俺は構わなかったと思う。、だとしても俺にとっては清一も清十郎さんも家族みたいなものなんだ……」
清十郎は少し困惑した。
確かに寺井と自分は少なからずの関係はあるだろうが、親や家族と思われる殆親密になった覚えはない。何故、寺井はその様な思いをしているのだろうか、清十郎は疑問した。
寺井は清十郎の困惑を察した。
そして寺井は言うべきか迷っていた。
寺井は自衛隊の振りをして清十郎と清一を助けに行った。それだけ清一も清十郎も寺井にとって、大きな存在であるということを伝えたい。
だけど寺井は駆けつけるのが遅かった。もっと早く駆けつける事ができていれば、清一も清十郎も傷つかなくて済だから。
このログアウトできない世界に危険を承知で来たのも、清十郎が意識不明で病院に担ぎ込まれていたからだった。
清十郎
「寺井さん、どうして泣いているんです?」
寺井は慌てるように涙を拭った。
「あ、いやこれは、」
寺井は、この世界で清十郎を一人にしたくなかった。、でも助ける術がないまま勢いでやってきてしまった。
(どうにもなりません! 貴方も私も死にました!)なんてキツイ真実を寺井が言えるわけない。
清十郎
「ちょと、何時まで泣いているの? 寺井さんが言う通り、外の世界と一生繋がれないと決まった訳じゃないのだから、諦めちゃだめだよね。さっき寺井さんが、自分で前向き発言してたのに、泣いてるのは違うでしょうよ?」
寺井も、もしかしたら何かの脱出の術があって、肉体が腐敗する前にログアウトしたら魂が戻り、生き返れるのではと考ていた。
清十郎「そう言えば清十郎のゴーストは何処へやら?
寺井
「清十郎さん、まずはゴーストを探しましょう。
清十郎
「?」
寺井
「以前のシナリオで清一は物知りゴーストに出会って世界の真相を暴きました。そのゴーストなら助かる方法を知っているかもしれない」
清十郎の記憶だと、そのゴーストは清十郎達の仲間であるゴーストの事であった。ゴーストはそのシナリオについて知っているのだろうか。
寺井
「もしゴーストが記憶を弄られて忘れているだけなら、過去のシナリオを思い出すかもしれません。もし思い出して物知りゴーストになれば、何らかのアイデアくらい、くれるかもしれない」
清十郎も寺井もヤケになっていた。
藁をもすがる思いで、ゴースト探しの旅に出ることになった。
「寺井さん、テレポートスボットから最初のダンジョンに飛べませんかね? ゴーストが住処に帰ってるとしたら、最初のダンジョンにいる筈。あと少し寄りたいところがあります」
寺井「?」
清十郎「今いるVîP世界は日本の町並みが再現されてます、もしかしたら、戦闘機やヘリコプターが有るかもなので、それを持って行けるか試してみます」
寺井「なるほど。それは良いアイデアかもしれませんね。」
◆
清十郎達はテレポートスポットを使い軍事施設にて合流した。
軍事施設の門には自衛隊なNPC(プログラムキャラ)が一般人の通行を制限していて、無理やり入ろうとすると邪魔をしてくる。職業が軍人でないと入れてもらえないらしい。
入口で問答していたら、施設からヘリコプターが飛び立つのが見えて手を振ってみた。
ヘリコプターは清十郎達の元へ降りてきて……
「良かった! 他に誰もこの世界に居ないのかと思ってた。心細かったよ!」
ヘリコプターを操縦していたのは藤井プロだった。藤井プロは実在のヘリコプターの運転免許を持っているそうで、何とか乗りこなしているそう。職業が軍人でないと、戦闘機の操縦はできそうにないという。戦車なら運転マニュアルが施設の中にあるらしく読めば操縦できるかも、らしい。
藤井
「しかし君たちも物好きだね(笑) こんな危険な世界に飛び込んで来るなんてさ!」
清十郎
「貴方こそ、何しにこの危険な世界にきたのです?」
藤井
「そんなもの好奇心に決まっているだろ。危ないとわかってる場所に飛び込むのが男の子というものだよ。そんな事より、乗りなよ。何処か遊覧飛行しようよ。」
清十郎
「ところで藤井さん、どうやって施設に入ったのです?」
藤井
「うん? レイピアで門番を突ついた、だけだよ?」
清十郎達も早速門番を切り倒した。
藤井
「ちょっと! 早まっちゃだめだろ!」
清十郎達が門番二人をやっつけたら、サイレンが鳴り始め、施設の中が急に慌しくなった。
藤井
「いいから、早くヘリに乗って、このままだと追っ手が来て殺されちゃうよ!」
〜ヘリの中で〜
藤井「レイピアで突くのはギャグだよ。このゲームはクオリティが高いから、公務員なんか攻撃したら、指名手配されるよ」
笑えないジョークにキレる清十郎
「藤井さん!、どうやって施設に入り込んだのですか!」
藤井
「賄賂を渡して入るに決まってるじゃないか!」
その理屈は犯罪者の視点だった。まっとうに生きている清十郎には思いも寄らない価値観である。
藤井はヘリに乗ったままテレポートスポットから、初期の街にテレポートした。
藤井「とりあえず、使えそうな武器と弾薬を持っていくといい」
ヘリコプターの後ろの席は藤井が賄賂と引換に貰い受けた弾薬と武器が所狭しと積まれていた。
藤井「これからどうするんだい? 僕はログアウトできない理由を探す旅をしようと思うのだが」
清十郎が「じゃあ、初期のダンジョンに連れてって欲しい」と言おうとした瞬間、ヘリに衝撃が走った。どうやらヘリの音を聞きつけて飛行系のモンスターが現れた。
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中