引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
信じる人は希だけど、信じた人とは友達にれるしゲームそのものの情報収集も効率的になる。
あくる日、清一は寺井がマリファナ密売交渉に使った落書きを見つけた。
浜辺に記された謎の文字列は、マリファナ販売に関するルールが英語で書かれているのだが、文字列が魔法で暗号化されてて、ただの落書きにしかみえない。
「変わった落書きだな……何かの意味があるのか? ただの絵か?」
通すがる人もいない、人気のないビーチに謎の文字
寺井の視点
ヤバイ! プライベートビーチを公開設定してしもうた!
このままだと誰かが砂浜を荒らしてしまいかねない。時間かけて、せっかく密売ルール書いたのに、
寺井は公開設定を非公開に設定し直した。
その瞬間、寺井の目の前に清一が現れた
「あ、はじめまして。こんにちは。清一と申します」
寺井は安堵した。砂場は荒らされてないし、客も釣れたわけだから。
「せいいちさん? これ好き?」
麻薬に詳しい人ならわかるジェスチャー合図である
清一には意味がわからなかった。
「それよりも、この絵はどういう意味があるんですか?」
「たのしいことだよ
「楽しい? 汚い絵だから不快気分ですよ?」
だめだこの客、寺井は清一に密売するのを諦めて出ていって貰らおうと、その空間を切り離した。
しかし、どう言う訳か清一はプライベート空間に閉じ込められたままに
「あれ、これゲームバグかな? はじめてみたけど」
「そうです、空間が切り替わる際に同じ場所を座標指定してテレポートを連続して使うと、残像がその空間にしばらく残るのです。残像が残ってる間は声も届きます」
そういって清一は
陰謀論に関するサイトのアドレスをメッセージで寺井に飛ばしてきた
寺井は以前にも似たようなアドレスメールを貰った記憶があった。
寺井は、そんなことより今、清一がやって見せた残像が残る程のテレポート連射に興味を覚えた。
寺井は清一を追いかけていった。
〜システム管理者の視点〜
システム管理者の竹内は仕事を終えて駐車場に向かう。車に乗り、バックミラー見た。安全確認に気を使っているのでなく、彼女の後をつける為に車に乗り込む監視者を気にしている
システム管理者の彼女は不本意ながらゲームを利用した殺人行為に少なからず加担をしている。
政府による人口削減政策が本当にあるのか、ないのか、会社側が独自の判断でゲーム内で死ねば死ぬ様に仕組んだのか、彼女は何も分からない。
分からないが、会社はたしかに死者を生み出し続けてて、黙認してるのは事実であり、それを告発しようものなら、家族を人質にして脅しをかけてくる。車で後ろを追いかけてくる監視者もその脅しの一貫なのだろう。
脅されている彼女は不安になるだけであり、逃げたい気持ちで一杯だった。我が家への帰る道中、監視者さえいなければ心が明るいだろうが、どうしても心が暗くなる。今日は生きれたけど、明日は死ぬかもしてない。今日は家族を守れたけど明日は失うかもしれない。あれこれ考えて気持ちが落ち着かない彼女。道すがら、ふと目に飛び込んでくる人気のない寂れたボーリング施設を見るに、今の自分の荒れ果てた気分を象徴してるかのようで、余計に気が重くなる。
「こんな汚いボーリンク場、お客さんなんて来る筈ないよ」
どうせ採算なんて合わないのだろう、さっさと取り壊して更地にしてくれれば、この陰鬱な気持ちも少しは晴れるというもの。
彼女は、やるせない不満をボーリングにぶつけた。日々募る罪悪感やら監視される恐怖、何もできないイライラを家族に悟られない様にしなければいけない。作り笑顔を家族に見せながら、そんな自分を誇れないから合わせる顔もない、なのに家族だから顔を見せなければいけない。
苦しい家族。、本来親子というのは、もっと運命共同体のようで、一緒にいると安らいで、安心して幸福なものではないのだろうか。
彼女はやるせない気持ちをボーリングにぶつけた。
お客さんは彼女一人だけ、
黙々とピンを倒す音だけが、無駄に広い空間に響きわたる
一汗かいた彼女は時計を確認する。そろそろ夕飯の時間になる。今日は作ってる時間はないし惣菜ですまそう
彼女は車に乗り込みボーリング場を、後にした。
相変わらず監視者はついて来る
スーパーで降りて、惣菜を選んでいると、チラチラ監視者が、目に飛び込んでくる。イライラを収めることができない彼女は、監視者に向かって駆け寄り
「いい加減にしてくれ!」
渾身のエネルギーを込めて怒鳴った。
彼女には息子がいる。成長期だし、食べモノには気を使ってる。毎日気を使ってるし、これからだって気を使う。毎日頑張ってる。それなのに監視者は、なにしてる? 目障りなだけだ。日がな一日邪魔してきて、悪いとは思わないのか
良心があるなら、お前がこはん作れよ。上げ膳据え膳で食べさせろ
セリフにしたら
「私には子供がいる。栄養あるモノを食べさせたい。いつもそう思って食べ物を選んでる。だけど、お前らみたいなクズのせいで、集中できないんだよ! 今日何食べようとか、 何が食べたいとか美味しそうだとか、選ぶ楽しみすらないんだよ! お前らクズにこの気持ち わかるか? わかるのか?
貴様さえいなければ、自炊できてだんだ。心に余裕があって、ご飯作ってたんだ。なのに添加物の入った惣菜を食わせる私、どうするのこれ? 親として失格じゃん。人として失格なのはまだ許せる。でも、親としての失格になるのは許せない。全部お前のせいだ。お前が息子を不健康してる。これからもそうするつもりなら、あんたを殺すぞ。不健康になる未来の息子に謝れ。今この時点で謝れ。それができないなら、今すぐ息子の健康を返してくれ! 」
ヒステリック彼女に周囲の目が向かう
~監視者の視点~
なし
~システム監視者の竹内の視点〜
竹内はちょくちょく陰謀論サイトに訪れて内容をチェックしていた。サイト管理人は清一といい、殺されない為に、あえて本名を公開しているのだそう。もし清一がログインしなくなったら、殺された事になり、ニュースになったり、なんらかの痕跡がリアルに残るから、それを後輩に参考にして欲しいのだという。
竹内はその自己犠牲精神に感銘して、ちょっとだけ、清一をストーカーした。
どういう訳か、清一はアルゼンチンにいて、ピチピチギャルなキャラと話し込んでる。
所詮はオスなんだな、そんな感想を抱いた。
しばらく遠目から観察したシステム管理者
会話が、かなり盛り上がってた。
気になるので、バレないように透明魔法を使い、こっそり近づき聞き耳を立てた。
「じゃあ、貴方があの有名な指名手配犯の寺井なの? うそっだー
「ほんとほんと、誰も信じてはくれないけど」
「でも、さっき自分、絵描きで生活してるって言ってたじゃん、絵の才能を微塵も感じないけど(笑)」
指名手配の寺井? まさかこいつが??
ロリロり露出魔が??
コイツがまさか??
寺井から武器の取引をしたい!
けど、それを言葉に出したら、きっと監視者に気付かれる
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中