引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
ガシャン!
窓ガラスが割れる音
誰がが家に入ってくる、
父親ではない。
狂人と化した人間が家の中を荒らし回っている。
階段をドタドタ駆け上がる音が聞こえ
鍵の掛かったドアノブをガチャガチャされる
「ころしていいですかー」
男の抑揚のない声が清一を凍りつかせた
「返事がないということは、いいんですねー」
男はドタドタと階段を降りていき
物置小屋に置いてあるハシゴを屋根にかけ、駆け上がる
清一の部屋の窓ガラスを割り、入ってきた。
清一は部屋から出ようとするが、ドアを開けられない。もう一人の狂人が部屋の前でドアノブを引っ張ってくるからである。
部屋に入ってきた男は包丁を持っている
包丁よりはマシ。清一は男から逃げるためドアを開けさせ、狂人に体当たりした。
狂人はドアの前に2人いて、更に階段にもう一人いた。全員がナイフやバットやロープ等の凶器を持っている
清一は捕まり、首を絞められる
狂人たちは、清一があの世に逝きそうで、逝かない苦悶の表情を見て楽しでいるようで、いつでも殺せる安心感に酔いしれている
清一は眼は充血し、ヴッヴッと、声にならない声漏らす
清一は何度も意識を喪失しては、目を覚まし、生き地獄を繰り返された……。
◆
清十郎は、街のパニックを見て悲観した。人の死体、内蔵やらが散乱してる道路、逃げ惑う人々に鳴り止まない救急車のサイレン、パトカーが行き交う。
電車が脱線してビル突っ込んでいて、道を塞いでる。レスキュー隊員は渋滞で車が混雑していて動けない。
清十郎の車も道の真ん中で止まってしまった。
電話を自宅に掛け続けているが、回線が込み合い繋がらない
清十郎は、車の荷台からゴルフクラブを取り出して、走った。
街中に暴徒化した狂人たちがバイクに乗り、店を襲撃している。
家々は放火され、泣きわめく人達を容赦なく追いかけ回している。女や子供も関係ないく、慈悲の欠片もなく、日本刀で突き刺している
自宅の前まできて、直ぐそばの道に死体が転がっているのを見た。それが清一の死体でないことを願いながら清十郎は玄関前に立つ。
清十郎は車に積んでいたゴルフクラブを武器にしている。相手が日本刀ならまだしも、拳銃等の武器を持っていたら……
清十郎に考えてる暇は無かった。街の有り様を見るに清一に危険が迫ってるかもしれない。
清十郎は何も考えずに、とにかく自宅の鍵を開けた。
玄関先の前で人の気配を感じた。奥から複数の男女がケラケラと笑い合う声が聞こえる。気付かれない様にゆっくりと玄関のドアしめた。声のする部屋、リビングの手前までゆっくり足音を消して近づき、部屋を覗く
清一が椅子に座らされロープが掛けられてる。清一は抵抗する意識も無いようでグッタリしている。
犯人たちをクラブで殴りつける為、息を殺してタイミングを待つ
「そろそろ飽きてきたから、体ばらす?」
「まって、あと一回だけやらして!」
犯人の一人が清一の首を絞めた。。ロープがギジギシと音を立て部屋に響く。3人の犯人たちは耳を済ましながら、その音に聞き耳を立てている。
清一の悶える顔を嬉しそう眺める犯人たち
『今しかない!』犯人たちの隙を突く様に飛び出した
2人はやっつけたが、残り一人に清一を人質に取られた、
クラブを下に置けと命じられる
犯人を刺激しない様に床に置いた。
犯人は座らせた清一の首に包丁を突きつけ
「後ろに下がれ!」
後ろに下がる清十郎
犯人は清十郎が後ろに下がったのを見ると、クラブを取りにきた。包丁を清十郎に向けながら、クラブを取る。清十郎は丸腰だったので何もできなかった。
このままでは清十郎も清一も殺される。何もできないなら、一旦逃げて武器になるものを探して戦うべきかもしれない。
先ほど倒した2人は気絶しているようだが、もしこの場を離れている間に息を吹き返したら……
『頼む。人質にするなら私を』
清十郎は自分が人質にして貰える様に願い出た。
犯人は応じる素振りを見せる。
「いいか、後ろを向いてゆっくりと、近づけよ。おかしいと思ったら息子は死ぬからな」
清一の首に包丁を突きつける犯人は、人質交換をするつもりはない。清十郎が近づいてきたら、クラブで殴り気絶させ、清一と同じ目に合わせるつもりだ。
犯人の意図を察知した清十郎は土下座した。
「頼むから清一を殺さないでくれ!」
犯人めがけてタックルしたい。
もしかしたら咄嗟のことで動揺して、犯人は対応できないかもしれない。運良く犯人を下敷きにして倒れ込む格好になれば、人質の清一から犯人の距離が離れるだろう。揉み合って刺される可能性があるが、犯人はクラブを左手に、右手に包丁を持っている。両手でしっかり握ってないから、体当たりすれば、どちらか1つ、運が良ければ両方の武器を落とすかもしれない。それを奪って犯人を殺すしかない。
今は、それしか選択肢がない。
清十郎は意を決して立ち上がった。
しかし、犯人は清十郎の意を察したのか、清一の後ろに回り込み、清一を盾にしてきた。
このまま飛び込んでも、犯人に届く前に人質の清一は殺されてしまう。
清十郎は何も出来なくなった。
攻めることも、逃げることもできない。
いや、全てを捨てて逃げることはできる。
清一を見捨てて自分だけが逃げれば確実に助かる。外で武器になりそうなものを探して、もう一度闘いをいどめば……
運良く気絶した二人が目覚めないなら……
清十郎は気付いた。逃げれば犯人は即、人質の清一を殺して、仲間の二人も見捨てて逃げるに違いない。犯人自身が一番身の安全を確保したい筈だ。
逃げる訳にはいかない。清十郎は考えた。
犯人が身の安全を守りたいのであれば、オカネで、なんとかなるかもしれない。
清十郎には大会で勝ち取った2000万円がある。それと引換に清一と交換してくれないだろうか、
交渉すれば少しは時間稼ぎもできるかもしれない。
「ほう? 2000万あるのか、じゃあ、暗証番号を教えてキャシュカードを渡せば、息子を開放してやる」
清十郎の財布の中にはカードがあるが、それを渡したら交渉は、すぐ終わってしまう。
息子の為の貯金なのでカードは家の中に隠してあると犯人に言った。
「じゃあ、3分まで待ってやる、それまでにカードを持って来ないなら、こいつを殺して、逃げるからな」
清十郎は犯人の目から離れて、探す振りをして考えた。
窓ガラスが破られているから、庭から回り込めば犯人の背中に出られるかもしれない
清十郎は靴を脱ぎ足音を立てないように庭に出た。
確かに犯人は庭を背にしているが……
犯人たちの一人が目を覚まして、正面に立っていた。バットを持っているので、このまま攻めても返り討ちにさる。
「おい! まだ見付からないのか! 」
そろそろ3分が経つ。犯人が警告した時間までもうない。
「おい、アイツを今すぐ連れてこい」
「はあ? 指図されるいわれは無いのですが」
「何言ってるんだ? 2千万が手に入るかもしれないだろ」
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中