引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
清一に潜む悪心は愛とは相反する感情であり、清一の脳は異なる感覚に支配され感情を処理しきれなくなった。それはある意味、脳が不要な異物で侵食されているとも解釈でき、そのせいで正常な思考がでなくて、被害妄想癖になっている
清一はパニック障害になっていた。
脳が相対する感情に侵食された清一の脳は、処理しきれないピークに来たときパニックした。呻きや叫び声を発する。近所に騒音が届くような絶叫して、恥ずかしい思いをして、パニック症状の意識を逸らして、平穏を取り戻そうとする。
パニック症状は主に父が外出した瞬間に始まる。抑えていた殺意を声に出しても父は気付かれることはない。
清一は殺意の衝動を開放して家の中を走り回る。それはある意味で、運動でありカロリーを消費する事で考える力を失って冷静さを取り戻せる。ある種の肉体の防衛本能かもしれないが、家の中でカロリーは使いきれないから、清一は絶叫してカロリー消費し、そして我に返ろうとする。
清一の基本的な生活スタイルは憎悪とパニックの連鎖から、毎朝、獣になる事であり
清一はつい最近まで、人ではない獣の様に、家を徘徊していた。
清一が働かないのは、恨んでる父への復讐心のつもりであり
今は父親の努力が見えるから、半分くらいの不快感情は無くなった。パニック障害は無くなり、憎悪も半分くらい無くなった。
しかし清一は、ゲーム内で父親と出会ってしまった。遊んでいるのを知ってしまった。遊んだ埋め合わせに、少しばかりの罪滅ぼしをしていて、それで朝食が用意されている。そう思った清一は元の獣に戻った。
心は閉ざされ、ゲームの世界に逃避する。
父親の存在を感じたくない清一は現在のアカウント吉井清一を捨て、新しいアカウントに変えた。
清一は、もう二度と父親の存在を感じたくない。感じてしまうと、殺したくて愛したくてパニックで苦しんでしまうから。
犯罪者になり果てた姿を想像する清一、怒りが収まらない清一は壁を思いっきり殴って、
手に怪我をした。
傷口の血を見た清一は、そうなったのは父親のせい、と考えてしまい狂人となって
用意された朝食を投げつけようとする。
しかし、投げたら、父親に心の弱い人間だと思われかねない。食事を投げるのは赤ちゃんが認知症老人くらいであり、絵にならない。
男のプライドが朝食を投げたい感情を押さえ込んだ。
清一は、しぶしぶ朝食を食べた
うれしくは思わない
食べきらなければ、人としての神経を疑われる。
折角親が作ってくれたのに、食べないのでは
人として頭がおかしい
清一は、誰に責められてる訳でもない。
自分自身に責められている
意識が父から自身にスライドし、怒りの矛先が無くなり、冷静になる。
清一は冷静なうちに朝食を食べきり、ゲームにログインした。意識をゲームに向けている間だけは獣にならなくて済むから……
〜清十郎視点〜
パーティー中の清十郎
パーティー会場には、巨大なドラゴンが見世物として飾られていた。
手なずけられているのだろうか、大人しく、している。プレイヤーたちが触っても問題ない。
ゴーストがそろりそろりと近づくが、距離を置いている
ゴーストにとっては、ドラゴンの尻尾が、かするだけで、死んでしまうかもしれない。とても警戒している
「大丈夫ですよ、ステータス関連は弄ってあるので、攻撃力は有りませんから」
とパーティー関係者は説明するが
ゴーストは怯えて近づかない
清十郎はゴーストに魔法のマントを被せた
「これ装備しとけば、多分死ぬことはないと思う」
清十郎は、このパーティーが終わったらゲームを止めるつもりでいる。清一が元の状態に戻ってしまったし、清一がこのゲームに参加してないのに自分だけ遊び呆けるのに、罪悪感を感じていたからだ。
ゴーストは清十郎と離れ離れになる事を察知して
悲しくなり、
思わず
清十郎の胸に飛び込んだ。
清十郎の胸に穴が空いた。
その日、清十郎は痛み止めアイテムを使い忘れていた。
幸い周りには大会参加した上位プレイヤーが多くいて、清十郎はログアウトする間もなく蘇生された。
四天王の一人が清十郎に話しかけた
「グッジョブ!」
誰かだかわからない
清十郎が知っている四天王は藤井くらいである。
藤井の人気はダントツで、VIP会員に取り囲まれて、大会での話やプライベートを根掘り葉掘り聞かれているのだろう
「ああやって藤井はマメに営業してるんだよ」
名も無き四天王は清十郎に語りたいらしい
「大会で上位を維持するには、武器改造したり、魔法の錬成したり、カネがとにかく必要になる。スポンサーがいないと、やっていけない。特にソロプレイヤーは仲間の援助がないから……」
名も無き四天王が語ってる最中、清十郎のアカウントにメッセージが入ってきた。メッセージはゲーム会社の広報からで
内容は 、重大なシステムエラーが発生したとのことで、直ちにログアウトするか、街の外に出ない欲しい、とのこと
メッセージは全てのプレイヤーに送信されたようで、会場がざわめいていた
好奇心ある野次馬プレイヤーたちは街の外に出ていこうとしたが、リドナーの監視のせいか、テレポートが使えないらしく、
徒歩や空を飛んで街を出ようとするプレイヤーには、警備隊がシールド空間を作り捕獲した。
外の世界で何が起きているのか?
ネットで調べてみた清十郎だが、アクセスが殺到してるのか、エラーメッセージが表示される
《システムエラーが起きた同時刻のネットカフェにて》
夜の11時
突如としてヘルメットデバイスの通電ランプが激しく点灯し、プレイヤーの手足がバタバタと跳ねる。まぶたが痙攣していて、カッと目を開くその瞬間、4秒程、騒音に似た奇声を叫んだ。
まるで通り魔が目の前に現れ、家族や愛する者が目の前で次々と殺される被害者
の様に、絶望に満ちた絶叫が、ネットカフェに響きわたる。
このネットカフェに響き渡る異常な絶叫の主は、このプレイヤー1人ではない。VRに接続しているヘルメットデバイスを装着した者達全てが狂乱化している。狂乱はこのネットカフェだけではない日本全国の家庭や、世界にある全であり、現在接続している総勢500万人のプレイヤーが、同時に意識を喪失した。
皆、首が座り、沈黙し動かなくなる。4秒後、突如として皆が動いたと思うと、また動くのを辞めて沈黙する。皆が4秒ほど浅い呼吸をし、大きく息を吸う瞬間、ヘルメットデバイスを外した。天井を見上げて雄叫びを上げる。やかましい響きがネットカフェ内に伝わるその瞬間、このプレイヤーの人格が破綻していた。頭を左右に、ふる。顔をふりながら、涎を垂らす。
その同時刻、世界中のVRプレイヤーが似た症状を起こし、街に飛び出し、人を殺し始めた。走るゾンビのような、あるいは精神を錯乱させた通り魔のような……
殺意だけが脳を支配している人々はゲームに存在する人工知能に脳を弄られて凶暴化したのだ。
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中