引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
このネットカフェは個室がないが、多くのお客はVRゲームに接続するのが目的であり、接続中は意識を失う。なので余程大きな声を出さなければ他の客の迷惑にはならない。この店はパチンコ店を改装してレンタルスペースを提供しているので、座席数は500程あり、その殆どがVRに接続する目的で埋まっている。
清十郎もその中の一人であり……
ー清十郎の視点ー
清一が、最近ゲームにログインしてこない
清十郎はどうしていいか判らなかった。息子の荒れ方が以前に逆戻りしてしまったから、
何がいけなかったのか
清十郎があれこれ考えていると竹内と安井からメッセージが届いた。
「大会主催者側からパーティーの招待受けたので一緒に行きませんか?」
チーム清十郎はバトルロイヤル戦で藤井プロと白熱して戦った件にて賞賛された。VIP会員達が会いたがってるとかで、パーティーに招待されていた
清十郎
「寺井さん達も行くんですよね?」
ナギ、寺井、池内も同盟を組んで戦ったから招待されているはず
竹内
「それが連絡がつかないんですよ。最近、ログインしていないみたいで……」
安井
「代わりに、さっちゃん、連れていっていいですかね? さっちゃんの作品を沢山のプレイヤーに宣伝してあげたいんです」
竹内
「私も、できたら、ゴーストちゃんも連れて行きたいのだけど……」
清十郎は大会主催者に掛け合ってみた。
二つ返事でOKしてくれたが、VIP国入国になるので、脳内分析(悪意思想を持っていないかどうかの検査)の審査手続きは踏まないといいけない、らしい
また出国するまでの間は、脳内を常時監視する為、主催者が用意した監視者(リドナー)をつけなくてはいけない。
リドナーには脳内情報、個人情報は全てリアルタイムで見られてしまう。
清十郎「特に問題がなさそうなで、行きましょうか」
ー入国審査ー
結局、パーティーの当日になっても寺井たちとは連絡が付かなかった。
ちなみに
清十郎は、さっちゃんの母親(西中さん)も招待した。
さっちゃんには内緒で招待したので、西中さんは別人(ひきこもり小学生キャラ)を装っている。
入国審査と言っても、特に何かあるわけでもない。
システム管理者の権限で、勝手に脳内審査をされる。リドナーがついてるとか言われてもピンとこない
VIP国の中は、あえてなのか、現実世界の街並みが演出されていた。東京の街並みが再現してある地域はビルが立ち並び、ビルには巨大なスクリーンがテレビ番組を放送している
パーティー会場も、あえてリアリティを追求したのか、一流と言われるホテルで、オークラ東京が再現されている。
会場に来るルートにも、さりげなく地下鉄があり、誰も乗らない電車が走っていた。
エキストラなNPC(プログラムキャラ)が街を歩いていても良さそうだが、あえて無人の街である。人が誰もいないスクランブル交差点、車が走ってない高速道路、誰もいない総理官邸。ある意味で新鮮で、ある意味で開放的である。
沢山の施設の中でホテルオークラがパーティー会場に選ばれたのは、もしかしたら、メーカーのスポンサーとか経済的事情かもれない。
渋谷駅からホテルオークラまで、道が丸ごとソーメン流しで続いてるのは、優勝者が日本人である藤井を称えての事だろう。藤井の好物がソーメンだなんて、一度も聞いたことは無いけれど……
「やあ、清十郎君じゃないか!」
川の様に流れるソーメンの中で、藤井は泳いでいた。
「清十郎君もどうだい? ソーメンがまとわりつくのは気持ち良いよ?」
後から聞いた話では藤井は清十郎とトーナメントの対戦で、手を抜きまくっていたらしい。余りにもレベルに差が有るそうで、華麗な殺陣を魅せて大衆を沸かせていた。
「ソーメンが体の穴という穴に入ってくるよ? どうだい清十郎君? 君にも入れてあげようか?」
人というものは何か一つ秀でた物があると、それを相殺するくらいの致命的な欠点を持つのかもしれない。
しかし、藤井のキャラ結構なイケメンキャラなので
さっちゃんが目をランランとしている。
次回作の構想でも考えているのか、さっちゃんが、ソーメンにまみれた藤井をカメラで撮影し始めた。
「君はもしかして、あの時の……」
「はい、そうです! あの時は有名人だなんまったく知らなくて、今またこうして会えてビックリしてます!」
「そうかい、そうかい、僕もまた君とこうして会える日が来るのを楽しみに待っていたんだよ。なぜなら僕はロリコンですから、君に会えるのを心待ちにしていたんだヨ。」
「ロリコン? ま、ま、まじに!?」
「どうだい? 僕と子供作るかい? 」
「え!!」
「大丈夫、あくまでパーチャル出産だから、リスクはありませんよ?」
さっちゃんは、ロリコン体型だが、ロリコンが好きな訳ではない。
'ロリコンが好きなロリはいませんよ? 'そう言おうとしたら、さっちゃんの母親(ロリコン体型キャラ)が、割り込み
「わ、わ、わたし、ど、ど、どうですか? オカネくれるなら全然オーケーですよ?」
西中さんは、娘の実家の牧場を買収して、倒産させたい。そのカネを必要としている。
「なんか年を鯖読むオバサンが言いそうなセリフだな」
さっちゃんの母は37歳の大晦日生まれなので正解。
西中さんは食い下がらない
「じゃあ、バイトかなにか紹介していただけないでしょうか」
必死で掴もうとする西中。藤井の資産は200億以上ある。おいそれと藤井との人脈を失いたくない。
「じゃあ、そこにいる、さっちゃんに僕の子供を創るように説得してよ」
「そ、それは…」
それは親として出来る訳が無い。
「10億払うよ?」
バーチャルセックスといえど子供を売るような真似はできない。西中は気是とした態度で拒んた。
「こういうのは、さっちゃんの気持ちが大事ですし、こういうのは大人になってからの方が良いと思います」
「では50億なら?」
藤井が即質すると、流石に、さっちゃんの心が折れたのか
「50いいですよ。その代わり、約束は必ず守って下さいね」
さっちゃんは、金に落ちた。10億では落ちず、50億まで値を釣り上げる根性は、ぜひ大人も見習いたいところだ。
だが藤井は「冗談ですよ?」と一言いい、何処からとも無く麺つゆを取り出し、ソーメンをすすり始めた。
笑えないジョークに、さっちゃんはガッカリした。
「2億もあれば喜んで、やりますが……」
静まり返る場の空気、コロシアムでも藤井は無双だったが、笑いのセンスも無双だった。
心なしか藤井の顔から笑顔が消えた。ギャグが滑った事に相当落ち込んでいるみたいだ。
空気を察したのか、さっちゃんが、手作りのロボットを取り出した。ロボットは、藤井のキャラを模したもので、等身大で、キャラに向かって愛を囁くと、それに応じて愛を囁き返してくれるという。何度も愛を囁くと自律した心が見栄えて恋人役になるそうで、つまり藤井でホストアンドロイドを作りプレゼントしたのだ。
「これは! 美しい!」
藤井の目が輝き始めた。藤井はナルシシストであった。藤井は藤井人形を抱き寄せると
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中