引き篭りニートの親、VRゲームにハマる
竹内は清十郎と出会う前は、息子の引き篭りの事で悩んでいて、遊ぶ心の余裕がなかった。今は清十郎達とゲームをするのが楽しくて、ついつい今日も、上司の目を盗んで仕事の合間にログインしてしまっている。
そんな竹内も清十郎同様に多くを忘れてしまっている。宇宙人や政府の陰謀があったこと、清一を監視し清一の人脈を調査し、ヤクザから政府と戦う為の兵器を手に入れた事。それらに関連し、息子と清一が友達同士だった事、清一に息子が助けれた事等、多くの記憶を宇宙人らのハイテク技術で消されてしまった。
断片的に消されてチグハグとなった記憶は竹内自身想定しない価値観へと纏められたが、竹内自身、その事には気付いていない。それは竹内を取り巻く同僚や上司、息子も同じであった。宇宙人、及び政府の陰謀に関連した者達は皆、記憶を抹消され、別人の様に生活しているのだった…
◆
ー大会開始ー
プレイヤー同士の対戦会場は異次元世界の特別な都市にで開催される
格差社会とも言えるかもしれないが、普段は政財界のVIPプレイヤーだけが、入国を許可された惑星都市がある。
大会期間だけ、コロシアムが一般公開されて、金持ち共が特等席でゲームでの対戦を見る。
大会期間外で一般が入る場合は特別な入国審査が必要で、メーカー側が用意したシステム管理者(リドナー)の権限で脳内情報を読み取られ分析される。前科はあるのか、犯罪者予備なのかを心のレベルで審査され、基準を満たせないと、入国を却下される。
また入国しても常に脳内はリドナーに監視され続ける。
そんなVIPな街で、大会が1年に一度、行われる。賞金総額はなんと1000億を超える。
世界中から参加者が集まるこの大会に、なんやかんやと清十郎と竹内も参加を希望した。
「まさかこんなすごい大会とは思わなかったな」
清十郎は学生時代の剣道大会のようなものを想像していたが、完全に裏切られた。
大会種目はバトルロワイヤルで、一斉に乱戦なる戦争やって、生き残った者がトーナメントに出られる
寺井
「清十郎さん、バトルロワイヤルは何もしないのが重要です。剣道の様にその場からあまり動かず守りに徹して、反撃の、機会を伺うことです。」
清十郎は何となく分かった。
やられてないのにこっちから、攻撃を仕掛けるのは怨まれて喧嘩状態になり、周りのプレイヤーが見えにくくなる。
死角が増え、バッサリ後ろから殺られる。いわゆる戦国時代の戦(いくさ)と同じである。逃げたら弱いと判断され集中して襲われ、身ぐるみを剥がされてしまう。
寺井達から借りた装備を返す為にも無様に負ける訳にはいかない
清十郎には予め戦闘前に魔法をかけてステータスを向上させる。魔法に対するバリア、及び跳ね返す魔法をかける。テレポートでバリアの内側に侵入してくる敵、及び攻撃には、こちらもテレポートで対応して逃げる。
清十郎は反射神経特訓をしてないので、戦って勝つことは考えてない。バトルロワイヤルで生き残ってるだけで、賞金が手に入る制度なので、取り敢えず生き残りを頑張ってみる。
竹内も安井も清十郎と同じで特訓した訳ではないので、似たような戦術になる。安井に関しては青魔道士の能力「モンスターの技を吸収して覚える」が、あるので、要所でモンスターのワザを使う青魔道士の攻撃を受けに行くのがお得だ。
他、寺井とナギ、スルメイカの池内とは同盟を組み協力しあう。
基本は皆で、ゴーストの近くで待機する戦術である。ゴーストが10秒先の未来を予言してメンバーに伝えるのだ。
このバトルロワイヤルでは、
リングが内側に収縮して時間と共に逃げ場がなくなる。
戦闘開始前に前回の優勝者へのインタビューがある
司会者がインタビューした
「いやはや、前回の戦いは華麗な突きが栄えましたけど、今回も見せていただけるのでしょうか、藤井選手」
藤井という選手について、思い出すことがある
竹内
「さっちゃんが教えてくれたアカウントの人だ」
そう、あのホスト大好きさっちゃんが教えてくれた人だ。
さっちゃんが今どうしてるか、少しだけ販売サイトを見てみた。
新しいホストドールが開発されている。マニアックプレイの18 禁向け商品で、主(あるじ)が生み出す擬似小便をホストが口に含んで、ホスト仲間たちと口移し交換し合うエロス仕様。価格はちょっと高めの2500円
ところで、さっちゃんは税金対策はしているのだろうか、税務署からの警告が来る前に教えてあげないと
藤井は高らか手を振ってる
たしか職業は自宅警備員(引きこもり)だったはず、随分と人前で堂々としていらっしゃる。
最近はやりのプチニートみたいなものか?
前回の優勝で賞金200億だから、清十郎の息子であるはずがないな。最初レイピア使いと聞いて
まさか、とは思っけどね。流石に、そのあからさまなフラグはリアリティーがないから!
》視点 吉月清一《
彼は重度の引きこもりで、ゲーム世界ですら、友達を作れずに引きこもっている。大会には参加はしているがソロプレイヤーである。
彼自身、ソロプレイが不利なのは知っているが、だからこそ勝つと強い優越感に浸れる。その快楽から成功していったのが藤井であり、つまり吉月清一は藤井のファンでもある。
藤井もソロプレイヤーとして大会を勝ち抜いた。ソロプレイヤーの唯一の利点が、目立ちに難いことにある。
清十郎チームのような共闘タイプは、確かに確実に生き残れるが、集団でたむろしているから目立ちやすく、結果的に多くの攻撃を受けてしまう。
ソロプレイヤーとして、一旗揚げたい吉月は過去の藤井の戦闘を徹底的に分析した。その為、職業も西洋騎士レイピア使いに変えたし、未来予知等のスキルも持てるだけ、持ってきた。
練習の過程で藤井の行動分析をしていて、不思議に思ったのは、大した動きでもないのに、突いた場所に、たまたま敵がいるという状況が多かったこと。
今回のロワイヤルでも藤井に似たような事が起きていて、まるで未来予知以上の、何か物凄いアドバンテージを、隠しているのではないか。
例えば実在しないとされてる魔法、人の心を操作する洗脳魔法等があったりして……
《清十郎視点》
清十郎たちは確実に生き残っていた。
ゴーストが未来予知10秒を皆で共有したのが、大きく戦況を有利に進ませた。魔法陣を使った広範囲の魔法攻撃も、当たる前にテレポートで逃げれてしまう。
予選落ちありえない。
そんな時、どこからともなく、剣が飛んできた。清十郎の魔法バリアを突き破っていく勢いで、池内がバリア魔法を重ねがけしている。
池内から清十郎に通信がはいる。
「清十郎、今のうちにテレポートで逃げて」
清十郎もそのつもりだった。しかし、テレポートが使えない。魔力が足りないとかでなく、テレポートそのもが発動しない。
(このゲーム、万が一死んだとしてもリアルで死ぬなんてことはない)
作品名:引き篭りニートの親、VRゲームにハマる 作家名:西中