北へふたり旅 61話~65話
北へふたり旅(65) 行くぜ北海道⑨
北斗駅から在来線に乗り換えて、函館駅を目指す。
乗車したのは快速。途中の駅は停まらず五稜郭で停車したあと、
終点の函館へ着く。
周囲を見回しておどろいた。
日本人がひとりも見当たらない・・・
乗っているのは、中国人をはじめとする観光客ばかり。
足元に置かれたボストンバッグの大きさが、長旅を意味している。
「シエン チュヨン ゥリー ベン ゥレン ?(さっきの日本人?)」
さきほどの中国人が妻に話しかけてきた。
「シー , シー ウォ(はい、わたしです)」
「ヌオン シュオ ジョーン ウエン(中国語を話せるの?)」
「ドゥイ ブゥ チイ「ごめんなさい) 。
シー ブゥ ホーァ シー ディー(無理です)」
「スゥイ ゥラン ヌオン ダン シー(上手なのに)」
「ナー リー ディー ホワ(とんでもない)」
これだけです。わたしが会話できるのは、と妻がささやく。
「ビー ジー ?(筆記は?)」
中国人がメモ帳を取り出した。五稜郭と書いた。
「五稜郭ね。つぎの停車駅が五稜郭です。
よかったぁ。漢字が読めて」
作品名:北へふたり旅 61話~65話 作家名:落合順平