北へふたり旅 61話~65話
北へふたり旅(64) 行くぜ北海道⑧
仙台駅から2時間26分。終点の函館北斗駅が近づいてきた。
途中。「進行方向の右、函館山が見えます」のアナウンスが有った。
あわてて車窓へ目を向ける。
しかし、見えるのは防音壁だけ。
厚い壁にさえぎられ、景色はまったく見えない。
(見えない。駄目か・・・)
あきらめかけたとき防音壁が低くなった。とつぜん視界がひらけた。
工場らしい建物の向こうに、海が見える。
海のうえに、こんもりと島のような山が見える。
「あれかな?。函館山・・・」
また高い防音壁がやってきた。
函館山らしい山影があっというまに、防音壁のむこうへ消えた。
「車窓の景色を楽しむつもりでいたのに、新幹線は無粋です。
トンネルがおおいし、防音壁も高すぎるます」
北斗駅へおりるとき。妻が不満そうに口をとがらした。
「ここは豪雪地帯だ。
防音壁は音以外に強風や、横なぐりの吹雪をふせぐ意味もある」
「せめて半分でいいから、透明な防音壁にならないかしら。
コンクリートの防音壁ばかり見ていたのでは、旅情が半減してしまいます。
北の大地のそうだいな景色を期待していたのに・・・
裏切らた気分です。う~ん、残念」
鉄道旅の魅力のひとつが、車窓の風景。
つぎつぎ変わっていく異郷の風景は、旅人気分をもりあげてくれる。
作品名:北へふたり旅 61話~65話 作家名:落合順平