北へふたり旅 61話~65話
「心配はない。在来線を廃止するんだ。
貨物のコンテナを、専用新幹線に積み替える。
このアイデアが魅力なのは、札幌まで新幹線が伸びた時。
7時間30分かかっているいまの輸送時間が、新幹線を使えば
2時間30分に短縮される。
旅客がすくなく、不効率な新幹線が貨物で威力を発揮する。
そんな構想が、この地下トンネルの中で密かにすすんでいるらしい」
「赤字なのですか、北海道新幹線は?」
「飛行機を使うのが一般的だからね。北海道旅行は」
「ごめんなさい。飛行機に乗れない女で」
思わず苦笑した時。窓の外が一瞬明るくなった。
明るく見えたのは貨物列車の運転席。一瞬で見えなくなった。
しかし窓の外は、何かとすれ違っている気配がある。
振動もないし揺れもない。
それほど最新の新幹線は気密性に優れている。
「飛行機に乗っているようなものさ。
航空機のパイロットは、200~240kmで操縦かんを引き起こす。
300km前後で離陸する。
はやぶさは320㎞で走ってる。
速度的には充分だ。翼をつければ津軽海峡のうえを飛ぶことができる」
「10両編成の新幹線が空を飛ぶのですか・・・
なんとも壮観ですねぇ」
「次世代型の新幹線・アルファエックスの最高速度は400キロ。
海底なんか走っている場合じゃない。
こいつは間違いなく空を飛べる。翼をつけたらの話だけどね」
「そうなったら北海道まで、あっという間です。
うふっ。面白そう。
あ、いけない。空を飛ぶものには乗れません、わたし。
やはり地上を走るものにしてください。後生ですから。うっふっふ」
(64)へつづく
作品名:北へふたり旅 61話~65話 作家名:落合順平