北へふたり旅 61話~65話
北へふたり旅(63) 行くぜ北海道⑦
上野発の夜行列車に乗り、雪の青森駅で降り、青函連絡船に乗りかえ、
こごえそうな鴎を見た津軽海峡は、いまはトンネルでこえる。
風の音が胸をゆする、泣けとばかりに、ああ・・・津軽海峡冬景色・・・
と歌っているあいだ、はやぶさ号は海の底を140㎞で走り抜ける。
青函トンネルは全長53.85km。世界最長の海底トンネル。
海峡の水深は140m。そこから100mの地下にトンネルが掘られた。
北海道を海底トンネルで結ぼうという構想は、戦前からあった。
青函連絡船5隻の転覆。
1430人が死亡した洞爺丸事故がきっかけとなり、1964年。
調査坑の掘削がはじまった。
「28分ですって・・・トンネルを通過するのに」
「その28分を、さらに短縮しようという構想がある」
「さらに短縮する?。できるの?。そんなことが」
「トンネルをふくめた82㎞の区間を、新幹線と在来線の
貨物列車が走っている。
仲良く同じレールの上を走っている。
君も知っているように、在来線と新幹線はレール幅が異なる。
そのためここにはレールが3本ある。
外側のひろいほうを新幹線。内側のせまいほうが貨物列車用。
こうすることで海底トンネルの共有が可能になった」
「レールが3本あるのですか。ここには」
「在来線と新幹線が同じ軌道上を走っているのは、ここだけさ」
「なぜ、そんなことになっているのですか?」
「トンネルを利用する20両編成のコンテナ列車は、
1日25往復はしっている。
北海道産のじゃがいもや玉ねぎを送り出す大動脈だ。
止めるわけにはいかない。
トンネルを通る新幹線は、10両編成。1日に13往復。
とうぜんトンネル内ですれ違うこともある。
すれ違いの不安を解消するため、新幹線は本来の260キロから
140キロに減速している。
これを240キロで走れるよう改善すると、およそ18分短縮できる」
「マジックでも使うのですか?。
新幹線がそこまで速度をあげてしまうと、在来線の貨物とのすれ違いが
たいへんなことになると思いますが」
作品名:北へふたり旅 61話~65話 作家名:落合順平