北へふたり旅 61話~65話
北へふたり旅(62) 行くぜ北海道⑥
発車の合図はベルではなく、青葉城恋歌。
懐かしいメロディーにおくられて、はやぶさ11号が仙台駅をあとにする。
はやぶさは東京~新函館北斗間を、3時間58分で走りぬける。
東京を出たあと、大宮、仙台、盛岡、新青森で停車する。
途中で停まるのはたった4駅。これがはやぶさ号の速さの秘密。
「お弁当箱の紐を引くと、あら不思議、冷めた牛タンが
ホカホカになります。
すごいでしょこの仕掛け。思わず2つ買ってしまいました」
なるほど。ふたに『温まる牛タン丼』と書いてある。
薄切りの牛タンが麦飯の上に敷きつめてある。
牛タンは冷めると固くなる。
食感を戻すため、加熱式の容器をつかったのだろう。
平らな場所へ置く。弁当を軽く押さえ紐を引く。
10分から15分待つ。蒸気が止まってもしっかり温まるまでお待ちください、
と注意書きが添えてある。
「駅弁のスタートは、宇都宮駅で売られた握り飯。
にぎり飯なら冷めても美味しく食える。
窓から見える景色をサカナに、冷えても美味しく食えるのが駅弁。
炊き込みご飯がおおいのは、水分が抜けてパサパサになるのを防ぐためだ」
「では加熱容器で温めるのは、駅弁として邪道ですか?」
「肉は冷めると固くなる。しかし。肉を名物にしている産地はおおい。
加熱式容器の登場は肉を使った駅弁の救世主になった。
いいんじゃないか。温める駅弁があっても」
作品名:北へふたり旅 61話~65話 作家名:落合順平