北へふたり旅 56話~60話
しかし。簡単にはいかない。
先頭車両には運転席がある。
運転士の視界を考えれば、ある程度どうしても出っ張る。
出っ張った部分の抵抗を、ほかの部分を削ることで調整する。
そのため最新の新幹線は運転席のサイドが、すこしえぐれた形になっている。
「ホント。ながいですね。
ながいお鼻のゾウさんも、裸足で逃げ出します。うふっ」
「素足で逃げ出したゾウさんが、もっと驚く時代がやってくる。
ここを走る次世代型新幹線の試験車両が、完成したそうだ。
営業運転は360㎞。最高速度は400㎞。
空を飛べる速度だ。
じっさい。航空機の離陸速度よりはるかに速い。
時速200?240kmに達すると、パイロットが操縦桿を引き起こす。
240?300kmで離陸する。
新型車両に翼を付けたら、空を飛ぶことができる」
「まさか!。でもホントに400㎞ではしる新幹線が登場するのですか!」
「空は飛べないが、次世代型の名称はアルファエックス。
いかにも速そうな名前だ。
驚くなかれ、鼻の長さは22m。先頭車両はほとんど鼻だけだ」
「いつから実用されるの?」
「試験運転が2022年3月まで。
2030年。北海道新幹線が札幌まで伸びる。
そのときまでに、営業用の車両を完成させるそうだ」
「2030年ですか。乗れるかしらわたしたち・・・」
「元気で生きていれば可能性はある」
「あたし。そのときは喜寿でしょ。
う~ん、すこしは可能性があるかもしれません」
「女性は長生きだ。
俺はそのとき傘寿になる。生きているかどうかわからない」
「そんなの嫌。あなたもいっしょに乗ってください。
2人で行くから楽しいのよ。どこへ行くにも」
「そういえば俺たち居酒屋の時から、24時間ずっといっしょだな」
「そうですね。良くも悪くもいつもいっしょ。
顔も見たくない日も有ったけど、それもいまはいい思い出。
これからさきもこんなふうに2人で寄り添って出かけましょ。
ねぇ、あなた」
「それが俺たちの宿命かな・・・あっ、いかん。
発車のベルが鳴ってる!。
つまらん会話に没頭している場合じゃない。
はやく乗らないと、置いて行かれる」
「つまらん会話?。わたしと会話しているとつまらないの?、あなたは!」
「そういう意味じゃないが・・・
まぁいい。喧嘩はあとだ。
はやく乗り込まないとホント、乗り遅れちまう」
(60)へつづく
作品名:北へふたり旅 56話~60話 作家名:落合順平