北へふたり旅 56話~60話
北へふたり旅(59) 行くぜ北海道③
9時39分。17両編成のやまびこ43号が姿をみせた。
あざやか緑の先頭車両が、わたしの目の前を滑っていく。
(ロングノーズだ。いったいどこまで延びるんだ。新幹線の鼻は・・・)
こだまが登場した頃。新幹線の鼻は丸みを帯びていた。
鼻の長さは3.5m。団子鼻の愛称で親しまれた。
その後、新幹線は登場するたび、ノーズ部分が長くなった。
最新タイプは、最高速度320km/hで走る東北新幹線。
ノーズ部分は15mもある。
先頭車の全長は27m。半分以上がノーズ部分ということになる。
ノーズが伸びていく理由は、トンネルにある。
国土の7割が山岳地帯。
高速で運転するため、新幹線は急勾配を避ける。カーブも嫌う。
なるべく直線部分を長くして、運転速度を稼ぎだす。
必然的にトンネルが増える。
新幹線が高速で突入すると、内部の空気が圧縮され、押し出される。
出口側でドンとおおきな衝撃波をうむ。
速度があがればあがるほど、衝撃波はおおきくなる。
衝撃波を低減するためできるかぎり、ノーズをとがらせる必要がある。
理想は、鉛筆削りで削った鉛筆の先端。
するどい先端がトンネル衝撃波の対策に、もっとも望ましい。
作品名:北へふたり旅 56話~60話 作家名:落合順平