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北へふたり旅 56話~60話

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 「そろそろ行きましょ」

 妻がキャディバッグへ手を伸ばす。

 「おう」

 妻に先手を取られた。

 「駅弁はあつあつのとりめしを2つ、買うだろう?」

 「売店に着いてから決めます。
 でも買うのはひとつでいいでしょ。先がありますから」

 「ひとつ?。足りないだろうひとつでは」

 「上げ膳据え膳の旅のはじまりです。
 行く先で、美味しいものがたくさんあります。
 ぜんぶ食べてみたいの。
 いきなり満腹では、東北と北海道の美味しいものに失礼です」
 
 なるほど。それはいえる。
家事から解放された主婦の、上げ膳据え膳の4日間がはじまる。
食べたいものを、食べたいときに食べることができる。
それは最高級の贅沢だ。
朝から妻が上機嫌でいたことの理由がよく分かった。

 老舗弁当屋の前で、妻が立ち止まる。
並んでいる弁当の中から妻が選んだのは、とりめしはとりめしでも
岩下の新生姜とりめし。

 岩下の新生姜とりめしは老舗駅弁屋と、栃木生まれの「岩下の新生姜」
のコラボ商品。
とりめしをベースに、みじん切りの新生姜を入れて炊いたご飯。
新生姜をころもに混ぜた鶏からあげ。うずら卵の岩下漬け。
新生姜をこれでもかとばかり、ふんだんに利用している。
見た目も美しい。まさに岩下の新生姜が満載されている弁当だ。


 「850円ですって。うふっ。
 予算より、50円も贅沢してしまいました。うふふ」

 妻が笑顔で振りかえる。
弁当の売店は新幹線改札の、すぐ前にある。

 「さぁ行きましょ。北海道へ!」

 片手に買ったばかりの弁当。片手に真新しいキャディバッグ。
そんないでたちの妻が、新幹線のホームにむかって軽快に歩き出す。


(59)へつづく