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ジェノサイド・ワールド

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人間というのは実に不思議で、こころの中であんなにサキュバスやインキュバスを求めているのに、建て前上嫌悪する。ふしだら、淫ら、清くない、悪魔等。

パンを頬張り、それをさらに最高級のワインで流し込み、さあていよいよ死刑宣告かなと身構えていた。

ドアが開き、個室に品のいい靴音が響く。コツ、コツとゆっくりと歩いてくる人間。その人物の顔を見た時、驚いてきっと私は目を見開いていただろう。

「……驚いたわ。まさかこの国の実質No.2にお目にかかれるなんて」

「……フン。俺も驚いたよ。まさか淫魔が人間の政治関係を把握しているなんてね」

……カイドー経済産業大臣。隣国との戦争に終止符を打ったことで、経済産業大臣に大抜擢された人物。目の奥に光る暴力的なまでの知性。深い深い青色で、光がなく、ちょっと死んだ魚の目のように見えるのに、その全身を響かせるような声に下腹部が熱くなる。

今は部屋に二人きり。えっ、いやまさか。もしかして?

「……その目、何か良からぬことを考えているようだが、あらかじめ違うと言っておこう」

そう言いながらカイドー大臣は私の真向かいに座った。顔は真剣で、こちらをまっすぐ見据えている。

「あら、イヤだ。私はまだなんも言ってないのだけれど。そんな風な発言しちゃうなんて、本当は大臣様の方が溜まっていらっしゃるのではな・く・て?」

「残念ながら、俺には妻がいるのでな。他の女性と関係を持つことなどできん」

作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学