ジェノサイド・ワールド
「そーなんだ。ざーんねん……」
ドキドキしながら会話をする。ドキドキといっても、恋愛的なドキドキではない。カイドー大臣とあろうものがここまで丁寧な立ち振る舞いをするのが怖かったからだ。何か嫌な予感がする。死刑前ならこんなやり取りはしないはず。となれば、何か別の理由……?
「……フン。察しが良さそうなサキュバスで助かる」
カイドーはテーブルの上に手を置き、静かに呪文を唱え始めた。中央に緑色の画面が広がり、四角いパネルと、その真ん中に一人の男性の顔を写し始めた。徐々に鮮明になり、顔に色がついていく。
「…………」
とりあえず。私は黙ってその顔を眺めた。銀髪、紅眼。真面目で、とても利発そうな顔立ちだ。……うん。イケメンだ。かなりのイケメン。こんなイケメンなら知ってそうだが、残念ながら脳内データベースに引っかからない。となれば、ここらへんの人間ではないのか。
気になるのはカイドー大臣の方だ。この男の顔を再現するのに、なんだか苦悶な表情が浮かんでいる……怖いの、だろうか。あの百戦錬磨のカイドー大臣が。
そんなこんなを考えている内に、画像が完全に完成し、テーブルの真ん中で浮かんでいた。
「……誰?」
沈黙を破り、質問をする。
「コイツの名前は……シロガネ。シロガネ ビャクヤ」
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学