ジェノサイド・ワールド
ひー、ひーと笑いが収まらない中、隣にいたゲンの顔をその笑いとは真逆の表情をしていた。まるでこの世の終わりとでも言わんばかりに、恐ろしいまでに顔を真っ青にしている。
シロガネはと思い、急いで振り向くと、これはまたびっくりするほど涼しい顔をしていた。まるで笑われているのが自分じゃない、とでも言わんばかりの顔。笑われていることにすら気づいていない顔だ。しかしこの会話の流れでそんなはずはないことぐらい子供にだって分かる。なぜそこまで堂々とした態度が取れるのか正直であったし、若干怖さも感じた。
「黙れえええええええええええええええ!! 黙れ!! 黙れ!!!!!!」
ゲンが張り裂けんばかりの怒声を飛ばす。フーッ、フーッと呼吸を荒立て全員にそう言うゲンに、さすがの笑い声も止む。
後ろを振り向き、目で威圧した後、もう一度店主に向き直って、大真面目な声音でゲンは話し始める。
「いいか、もう一度いうぞ。ミルクとラミア酒を出せ。この女だってミルクを飲んでるんだ。無いとは言わせねーぞ。必ず出せ。命が惜しくば、言われたとおりの飲み物を持ってくるんだ、いいな!!!!!!」
途中で空になった私のグラスを指さしながらゲンは店主を威圧する。店主はその姿勢に呑まれることなくゲンを見据える。
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学