ジェノサイド・ワールド
1章 サキュバス編 邂逅
「…………!!」
うっかり声が出そうになったのを、寸で止める。シロガネビャクヤ……。間違いない。王国内で何度も見た顔だ。再現魔法はあくまでみた人間の想像で組み立てる魔法であったが、ここまで完全再現されているとは。カイドー大臣にとって、それほど重要な人物だということがわかる。
そんなシロガネは私のことなど目もくれず、部屋全体を見渡す。空いているテーブルを探して、奥の方に気に入った席があったのか、響く靴音を立てながらテーブルへと向かった。
全員の視線を一斉に集めていながら、全く動じていない。静かにテーブルに荷物を置き、上品に椅子を引いて腰かけた。
その数秒後、ドタドタと忙しない足音が玄関側から聞こえ、バタンッと勢いよく扉が開いた。
「旦那―! カヤック、繋いでおきました!」
シロガネとは真逆の……シロガネが気高さや上品さという言葉で表せるなら、「旦那―」と呼びかけた男の方汚らしく、田舎者育ち、都会にいても間違いなく乞食という風貌をしていた。伸びきった髪を頭上でゴムで縛り逆立てていて、眉毛はほぼ繋がっている。熱いのか上半身裸で服を肩からお腹の辺りで巻いているし、ズボンも砂で汚れているのか薄汚れてとにかく汚い。2週間精をとっていない私も、この男が相手だと考えるレベルだ。
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学