ジェノサイド・ワールド
今思えば、最後にちゃんと精を取り込んだのは王国の看守が最後だ。つまりもう2週間は経っている。それまでノーエッチを貫いてきているのだから、サキュバスとしては表彰ものだ。他のサキュバスなら3日で狂うに違いない。
シロガネが男前であったため、そこでまとめて摂取すればいいやと思っていたが、どうも無理そうだ。もはや我慢の限界。我慢というか生命の危機すら感じる。ここにいる男はひい、ふう、みい、……全員で9人。店主も含めれば10人。イケる。人間の風紀的には最悪だろうが、ここで乱交パーティを開催した方が間違いなく仕事が捗る。うむ。ヤろう。ヤってエナジードレインしてから、それから後の事を考えればいい。
頭の大半がHで支配されていくのを感じながら、店主に向かって「ねえおじさん」と声をかけた。
その瞬間だった。
色っぽい声で人間の脳波を揺らし、飲みかけの牛乳を胸元に垂らしたところまでは良かった。視覚的エロさもバッチリだ。これでとどめの一言を投げかけてやれば落ちない人間はいないと思っていた。
だが、店主はこちらを向いていなかった。ボタボタと落ちる牛乳は余所に、入口の方へ視線は移っていた。
「えっ?」
誰かが立っている。
スラッと背の高い、細見の男だ。背景の日差しが眩しくて、うまく顔が見れない。
男は静かに、でもコツコツと足音を立てながら中に入ってくる。
男の顔を目を細めて見る。入口から数歩入り、立ち止まったその男の顔は
紛れもなく私が探していた【シロガネ ビャクヤ】であった。
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学