ジェノサイド・ワールド
そんなこんなで、竜にまたがり、時折休憩を挟みながら超特急でアルメリア大国の南部までやってきた。竜酔いして道中、何度も吐いた。
現地でカヤックと水・食糧を貰い、町……いや村から村へと練り歩く。この辺りの地域が全く分からないのに、コンパスと地図だけ渡されても正直分からない。シロガネという男がどうもここらへんをカヤックで移動中らしいとだけは聞いたが。
「そもそも王国内とか、近隣の国とかじゃないんだ……全然違うところじゃん。見つかるわけないでしょ……」
ついそうボヤいてしまう。カヤックも鼻息で「フンッ!」と同意する。私は頭をなでなでしながらとにかく荒野を歩いた。もうかれこれ村を3つも周って、収穫0だ。中には異常に怯え、奇異な目をしてくる人もいた。
「わ、悪いことは言わねえだ!! お嬢ちゃん、アイツに関わっちゃいけねえ!!」
「この人そんな悪い人なの?」
「わ、悪いかだってえ!? ひいいいいいいいいいいいいい」
そういって蹲ってしまい、どれだけ話しかけても返事をしてくれなくなる。シロガネビャクヤ……一体何者だろうか。何をしたらここまで人を怖がらせることができる。
私はカイドー大臣が、わざと必要以上の情報を提供しなかったことになんとなく推察ができてきた。つまり、知らない方が仕事をしやすい、ということだろう。まあ私からすれば、どれだけ大罪人であろうと、あれほどのイケメンから精を搾り取ってもいいというのだから別に背景に拘る事情はない。人間の政治は人間でやればいい。
作品名:ジェノサイド・ワールド 作家名:綺斎学