EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー
「あ、どうしたかって聞かれても、どうなってるのかよく分かんないんですけど、すごく心配で」
「どんなことが心配なんですか?」
「・・・ストーカー」
(また来たか。簡単にストーカーって言葉使うなよ)
僕は頭をかいて、記録用のファイルを机の中央に動かした。
「ストーカーって、相手は誰で、いつ頃からどんな被害に遭ってるんですか?」
「よく分りません」
「・・・・・・」(分からないって何だよ)
「しつこく誘ってくる人がいて。気のせいかもしれませんけど、部屋に誰かが入った形跡があるんです」
(お? それがマジなら事件だ)僕は彼女の顔を見た。
「それは確かですか?」
僕はいつもの相談者より、少し事件性がありそうな事案に興味をそそられた。それにこの娘、結構可愛いや。
「留守中に侵入されるんですか? 何回くらい?」
「初めて気付いたのは、引越しして来て1週間くらい経った頃なんです。もう1ヶ月ほど前です。その時トイレの便座が上がっていて、『あれ?』て感じだったんです」
「掃除の際に上げたままだった、とかじゃ無いんですね」
「はい。まだ引っ越したばかりで、掃除するほど汚れてませんでしたから」
「男の人が遊びに来てたとか・・・?」
彼女は首を勢い良く振った。
「そうか。その後も何か変わったことは?」
「後を付けられてる気もするし・・・」
「しつこい人? 知り合いじゃないの?」
「しつこく誘ってくるのは職場の人で、それとは別に、通勤途中でよく目の合う人がいて」
「自宅まで付いてくるんですか?」
「いえ、駅からは自転車で逃げますから」
「じゃ、侵入者は誰か判らないけど、侵入されてる気がすると・・・?」
「頻繁って程でもないんですけど、カーテンが少し開いてたり、置いてた物の位置がずれてたりするんです」
「へえ、ポルターガイスト現象みたいですね・・・」
「イヤだ! そうだったとしたら、もっと怖い!」
「あ。調書取りますね」
僕は慌ててボールペンを持って、ファイルを開いた。
「お名前は?」
「井上奈美です」
作品名:EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー 作家名:亨利(ヘンリー)