EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー
プロローグ
「市民の安全を守るのが仕事じゃないんですか!? すぐに張り込みして犯人を捕まえてくださいよ!」
(デジャブ? またこのセリフか)と僕はため息をついた。(この女の人、エキサイトしてきちゃったな)
「お気持ちはよく解りますが、それだけじゃ、警察は動けないものなんですよ」
「こうして訴えに来てもですか!?」
「ええ、具体的な被害届がないと捜査は出来ないので、まずは交番のお巡りさんにパトロールを強化してもらって・・・」
「事件が起きてからじゃ遅いでしょ! 毎晩、駅から付けられてるんですよ!」
「・・・声をかけられたり、走って追いかけられたりはしたんですか?」
「それはないですけど、放っといて危ないことになったら、責任取ってくれるの!?」
「じゃ、やっぱり巡回強化で、不審者には職務質問するくらいしか、今の段階じゃ出来ることは限られています。なるべく人通りの多い道を選んで・・・・・・」
僕の名前は、南瑛人。市民を守る捜査3課生活安全係の新米刑事・・・なんだけどな。実際は苦情処理係みたいなもんだ。月に10回くらいこんな相談があって、警察として捜査に乗り出せるような事案は、そのうちの2~3件くらいだ。でもその殆どは、痴漢か下着泥棒くらいだな。
何とか納得してもらって、いや説得して帰ってもらったけど、悪態つかれるとこっちの気分も下がる。今日はマンションで禁止されてる飼い犬が人を咬んだとか、公園のブランコのチェーンが何者かに切られたとかで、同僚も殆ど出払ってるし、こんな時に誰も来ないでほしいのに、また一人、別の女性が訪れて来ている。
「はい。次の方、そこにて座ってださい。どうされました?」
「あのう、なんて言ったらいいのか」
「ご相談ですか? 被害届ですか?」
僕は面倒で、ついつい急ぎ早に話を聞こうとしてしまう。
作品名:EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー 作家名:亨利(ヘンリー)