EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー
第3章: ストーカー
数日が過ぎたある日、郵便局で働く奈美に、上司の大原が声をかけた。
「井上さん。明日の晩、時間無いかい? 来週、本局のお偉いさんの視察が予定されてて、その対応を君に任せたいんだけど、打合せをしなくちゃならないと思ってね」
「金曜の定時後ですか? まあ、予定は特にないですけど・・・」
大原と言う男は、簡易保険を担当する勤続10年の模範的職員だった。しかしこの時、奈美は警戒していた。自宅で変な出来事が続いていたので、それも当然だが、何より日頃から、この大原の視線や行動には、違和感を持っている。いつも誘って来るしつこい男とは、こいつのことだった。つまりストーカー候補No.1と言うわけだ。しかも、自宅での不審な出来事はまだ解決しておらず、日々不安感は増している。
(仕事だからOKしちゃったけど、私は正規雇用じゃないのに、どうしてそんなこと頼まれるのかしら? 今は誰とも接したくないのにな)
「金曜なのに、予定ないの? 若いのに寂しいじゃない?」
大原はニヤニヤしながら、話し続けている。
「ええ、まあ別に寂しくはないですけど、たまたま今週は予定入れてなかっただけで」
「普段は遊びまくってるんじゃ、ないだろうね?」
「そんなことないですよ。普通です、普通」(普通と言うより苦痛だわ)
そこへ奈美のスマホに、電話がかかって来た。制服のポケットの中で、ブーンと震えている。こっそり画面を見るも、それは知らない番号からだった。
「すみません。電話出ます」
そう言うと奈美は、体よく大原から離れた。
「仕方ないなあ。男からか?」
奈美は答える気力も湧かず、ただ首を振って、その場を後にした。そして、近くに誰もいないのを確認して、その電話に出た。
「はい。もしもし?」
「もしもし、城西署の南です」
「あ、南さん」
「井上さん、しばらくです。その後どうかと思ってお電話差し上げました」
「よかった。また相談しようか、悩んでたんです」
「また、何か起こったんですか?」
「はい。聞いてください。絶対、勘違いとかじゃないです」
奈美はその晩、警察署を訪れた。証拠動画のSDカードを持って。南刑事と東出警部補が、PC画面に映し出されたその動画を確認したのだが、
「これだけですか?」
動画をざっと早送りで見終えた後、南は聞いた。
作品名:EMIRI 4 三つ股してる?大親友のストーカー 作家名:亨利(ヘンリー)