205号室にいる 探偵奇談23
動画サイトに投稿された、人が亡くなった場所でふざけるというあまりに不謹慎な動画。颯馬は遊んでいた女の子に見せられて吐き気がするほどの嫌悪感を覚えた。死者を冒涜する数々の悪ふざけ。お寺の子ではないが、あれはいけない。
(行方不明ね…)
瑞はおそらく、鎌田らへの執拗な死者の追跡を看過したのだ。これまで、そういった見えない存在に目をこらし、救ってきた側の彼が、初めて視点を変えて関わった一件だったといえる。ただ、それは瑞が趣旨替えをしたとかそういったことではない。彼の意思は、これまでと同じように一貫している。傷つくものを助けたい、悲しい思いをさせたくない。それが彼の根底にある意思だ。
(その意思に反するなら、死者だろうが生きた人間だろうが見捨てる冷酷さなんて、伊吹先輩は知らなくていい)
瑞の中では、いつものように「自分にとっての正しいこと」なのだ。
「早く食べないと昼休み終わるぞ」
「はーい」
その後もアパートは取り壊されることなくそこにあると聞く。
なぜ取り壊されないのかは、誰にもわからないままだという。
そして彼女と彼らは今も。
205号室にいる。
END
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作品名:205号室にいる 探偵奇談23 作家名:ひなた眞白