205号室にいる 探偵奇談23
潤は駆けだした。追いかけて来るのか。駄目だ、隠れないと。
パニックになった足取りで階段を駆け下り、一階の共同トイレに駆け込む。この時点で、もう冷静な判断が出来なくなっている。暗いトイレ内には異臭が漂っている。右手に男子便器が三つ。左手に個室が三つ。潤は一番奥の個室に入り鍵をかけ、和式便器のそばに座り込んだ。
カン カン カン
ハイヒールの音が、階段を降りて来る。ゆっくりと、ゆっくりと、しかし足取りは迷いなく、こちらに向かっているのが潤にはわかる。ばれているのか、どうすればいい…。
息がうまく出来ない。極度の恐怖と緊張で、体が震える。
こつ
「!」
トイレ内に、入って来た。じっと気配を探す様に、足音がやむ。まるで、こちらの様子を伺っているようだ。
こつ こつ こつ
タイルを踏むハイヒールの音が、個室の方へ近づいてくる。
ギィ…
一番目の個室を開く音…。
バタン
閉じる音。
こつ こつ こつ
二番目の個室へ向かう足音。
作品名:205号室にいる 探偵奇談23 作家名:ひなた眞白