北へふたり旅 41話~45話
北へふたり旅(45) 北へ行こう①
妻の夢は宿の浴衣を着て温泉街を、カラコロと2人で歩くこと。
妻の気持ちはよくわかる。
居酒屋で20年。
日帰りのドライブは有ったが、泊りの旅はいちどもない。
「北へ行くか?」
朝。とつぜんの提案に、妻の目がまるくなる。
「北?。もしかして北海道?」
「行きたいだろ君。泊りの旅に」
6月は茄子収穫の真っ最中。
忙しさは、7月の後半までつづく。
旅を考えるどころか猛暑の中の作業に、毎日、悪戦苦闘している。
「いいわですねぇ。あこがれの北海道」
「8月後半に行こう。
お盆休みは混むから、最後の週、2泊か3泊で」
「飛行機は駄目。あたし、高い所は苦手ですから」
「だいじょうぶ。北海道新幹線が函館まで走っている」
「その先は?」
「札幌までの特急がある。4時間ほどかかるらしいが」
「いいわね。夢みたい」
「夢じゃない。
今日、仕事がおわったら旅行代理店へ行こう。
旅の相談をするために」
作品名:北へふたり旅 41話~45話 作家名:落合順平