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百代目閻魔は女装する美少女?【第五章】

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『都、今回はお前が相手に呼ばれたんだからな。政宗とは自分で話して説得しろ。』
 ここからは糸電話モードに転換。
『説得?いったい何を話せばいいんだ。』
『そいつをジバクから天獄か地獄へ行くことを決断させることだ。意思が決まれば、輪を切取るだけだ。ほらさっさと生徒会の仕事をしろ。』
『生徒会だと?生徒会は政宗や獅子天王じゃないのか?』
『都はこの春学の生徒会規則を知らないのか?生徒会は選挙で決めることもないことはないが、基本的には戦闘で勝ち取るものだ。前の体制を撃ち破った者が会長になり、自由に役員を任命できる。神たちはこのバトルに勝利したんだから、ただちに生徒会を構成することになった。』
『そ、そんな。生徒会になるつもりでここに来たんじゃないし、そもそもこいつらに呼ばれたからここにいるんであって。』
『それこそが、正当なる権利だろう。都が呼ばれたということは生徒会長は都だ。この神が都の風下になることは屈辱だが、そうでもないぞ。【愛す】の一件もある・・・』
『【アイス】?』
『な、何でもない。さっさとやれ。』
 美緒は急に赤くなったような。慌てて般若面を装着したため、顔は見えなくなったが、喉のあたりが赤くなっている。
「なんだか納得できないんだが。仕方ない。おい、政宗。お前は何が不満なのか、何を追いかけていたのか?教えてくれ。」
 政宗はどっかと地べたに腰を下ろし、胡坐をかいた。オレも同じ姿勢をとった。
「俺は負けたんだ。敗軍の将、兵を語らずなんだが、兵のことではなく、俺のことなら話してもよかろう。こんななりをしているが、これでも一応俺は女だ。年頃になり思春期を迎えた。」
「へええ。意外だな。馬子にも衣装みたいな。」
「茶化すんじゃねえ。ハズいだろ。」
「すまん。続けてくれ。いや下さい。」
「俺はある時、仲間たちと川で水遊びをしていた。魚を捕まえていたんだな。鮎を捕まえて、みんなに見せようとしたら、手から逃げて、飛んで行ってしまった。それがそばを通りかかった侍に当たってしまった。とんでもない失礼をしてしまったと、すぐさまお詫びにいった。衝撃の出会いだった。それはそれはとても凛々しい殿方だった。」
「ベタな出会いだな。」
「俺の思いでにツッコミをいれるんじゃねえ。」
「いや、これはオレの性分で。」
「そんなのやめてしまえ。ゴホン。そして、俺にはその方を思い続ける日々が続いた。いつかその方と○○○。ぐふ。」
「何照れてる。それでも武将か。」
「俺は女だ。ほっとけ。しかし、俺には悲劇が待っていた。ヒロインとはこういうものだ。」
「いきなりヒロインに昇華したな。」
「ヒロイン、なんと憧憬される言葉。おいといて。俺は自分の気持ちを母親に伝えた。母親とは仲がよく、尊敬していた。すると母親は応援すると言ってくれた。嬉しかった。だがまだ若いので、ちょっと待つように諭された。母親はあの方のことを知っているようだった。」
「もったいつけるんだな。ガマンが大変だったろう。」
「女の恥じらいを知っていると表現してくれ。それから数年が経過し、俺もすっかり女らしく成長した。」
「そうはみえないが。」
「脱いだらすごいんだぞ。」
「どれどれ。」
『『『『ギロッ』』』』。黙って聞いていた四人が都に刺す、いや貫くような視線を浴びせかけた。
「すまない。生徒会としての職務を全うする。」
 オレは正座した。
「そう。その姿勢で聞いてくれ。」
「俺はここらで、あの方に自分の気持ちを伝えたいと思って、母親に相談した。すると母親からは『あの方はおやめなさい。』と言われた。寝耳に水だった。」
「意外だな。何かネガティブな情報が見つかったのか。ちょいエロだとか。」
「貴様と一緒にするな。母親が口にした真実は俺には大ショックだった。なんとあの方は実の兄だったのだ。」
「「「「「えええええ!」」」」」
 五人揃って○○レンジャー。
「何か回りがおかしいぞ。」
「生徒会のみなさん。お静かに。ここはオレに任せてくれ。」
「なんだか、奇妙な連中だな。続けるぞ。俺の母親はかなわぬ恋を阻止したわけだ。」
「どうしてそんなことをしたんだろう。そもそも兄妹なら、最初からそう話しておけばこんなことにはならなかっただろう。」
「そこなんだ。俺は落胆し、人生に絶望した!」
「どこかで聞いたようなセリフだな。」
「俺はその後、戦で死んだ。そして、ジバクとなった。」
「それで今ここにいるというわけか。」
「いや続きがある。母親の行動は一見冷たそうだが、実は俺のことを思っての行為だということなんだ。」
「「「「「というと?」」」」」
またも五人で口を揃える。
「これは実のところ、政宗のことを愛するがゆえ。というのも、母親からすると、実の兄を慕う政宗に真実を伝える義務がある。初めから教えておくべきことを言いそびれたんだな。それだけ、俺がは兄に傾倒してたわけだ。ははは。これは戦国の習いで、いつ敵味方に分かれるかもしれないためだ。でもそんな兄に靡いてしまったのは真実を最初に告げなかった母親の責任だ。母親は断腸の思いで真実を告げた。知らない方があるいは良かったのかもしれない。でも人間として真実を知る権利がある。俺が教えてくれと要求したわけではないけど、母親の最後の仕事として、今わの際に伝えたんだな。そのあと母親は逝去した。『恨まれてもいい。でも私はふたりの母親。非難を浴びても幸せ。』そんな声が聞えたような気がした。だからと言って母親を許したわけではないがな。」
 政宗は自嘲気味に話した。
 そんな政宗のところに、万步がゆっくりと歩いてきた。
「私はね、」
 万步はいつもの「まっほ」ではなく、『私』という一人称を使用した。
「私は母親の顔を知らない、いや両親ともに知らない。一度も会ったことがない。どこにいるのか知らない。生きているのか死んでいるのかすらわからない。私はコインロッカーで生まれた、いや捨てられていた。そして孤児院で育った。でも私を捨てた母親を恨んだことはない。捨てた事情がきっとある。それが何かはわからない。知りたいと思ったことはあるけど、手がかりがまったく掴めなくて、諦めた。でも事情がわかっても私は変わらない。どこまでいっても私は私。自分の思うように生きるしかない。むしろ、捨ててくれたおかげで、私は他の人よりずっと早く自立できた。だからアイドルやりながら学校に行った。両立は大変だった、苦しかった。でも嫌じゃなかった。」
「それが俺の生き方と何の関係がある。貴様と俺は立場、生き方もまったく違うだろう。それは貴様がそういう生き方をせざるを得なかったという人生だということではないか。貴様は貴様の好きにすればいい。俺は自分の立場で母親を恨んでおるだけだ。」
「あなたはわかっていないわね。事実を聞くということは耳に痛いこともある。でもそれを判断するのは自分。情報の提供すらなければ、何も考えることもできないの。私には何の情報もなかった。だから考えたり、悩んだりすることもできなかった。こちらの方がどれだけ辛いことか。あなたにはわからないのね。」
「わからないぞ。俺は闘わずして恋に敗れたんだ。こんな悔しいことはなかった。ああ、兄上、お慕い申しております、ううう。」