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百代目閻魔は女装する美少女?【第五章】

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「政宗よ。母上にその話をするようお願いしたのは拙者だ。」
 オレが政宗に向かって喋っている。これはどういうことだ。
「そ、その声は兄上。」
政宗の兄がオレに乗り移ったらしい。
「久しぶりだな。元気だったか。と言っても死人同士だが。拙者は天獄、お前はジバク。なかなか会えぬものよ。」
「兄上、どうして母上にそのようなことを。」
「拙者もかなり迷った末のことではあるが、あの後、敵味方に分かれたとしても、拙者のことは知っておいてほしかったのだ。わかった上で戦う。つらいだろうが、それはそれで良かったのだ。」
「どうしてでございますか。」
「それはな、母上が亡くなる時点で、拙者の家族は拙者と政宗のたったふたり。でもひとりじゃない。ふたりだということを知っておいてほしかったのだ。これはなんの打算もない。家族がいる。それがわかるだけで十分じゃないのか。家族とはそういうものだろ。」
「ううう。たしかにそうかも知れませぬが、でも政宗の切ない思いは・・・。」
「そのような恋心と家族は別物だ。恋はいつか冷めることはある。でも家族の絆、血筋は変わることはない。どちらが大事なのかはよくわからぬが、家族の絆は永遠のものだ。だからこそ、お前に拙者が実の兄であることを告げたのだ。これで、拙者がいつ死んでも、お前が先に死んでも、家族であることは同じなのだ。恋以上のものをお前は手にしたのだ。」
「そこまで兄上がお考えであったとは。得心が行きました。でも、これだけは言わせて下さいませ。兄上、政宗はどこにいっても兄上をお慕い申しております。」
「ありがとう。そこまで思ってもらうことこそ、男冥利に尽きるというものよ。ではさらば。」
「政宗も兄上のおそばに今度こそ参ります。」
「そうだな。それでこそ、我が妹。」
「でも天獄に行く前にひとつお願いがございます。」
「なんだ。この期におよんでの話。何でも聞かせてもらおう。」
「では。今の兄上のからだは、こやつのもの。であれば、ここにいる兄上は実の兄上ではござりませぬ。」
「いったい何が言いたいのだ。」
「こうでございます。」
 政宗はいきなり兄上=オレに口づけ。
「愛しております、兄上。」
「・・・そういうことか。これは一本取られたな。ははは。」
 すると、政宗の姿に影が差す。ゆっくりと足元から、暗くなっては消えていくではないか。
「おかしいぞ。ジバクは輪を斬って、天獄か地獄に行くことが決まりだろう。政宗のヤツはいったいどうなったんだ?」
 美緒が全員共通の質問をした。
「やってしまいましたね。」
 突如、黒服を着た男が現われた。閻魔女王に仕える霊界の執事・李茶土。プロローグ以来の登場である。
「李茶土。いったいどういうことだ。この神が知らぬことがあっていいものか。」
「誠に申し訳ありません。我々が予想していたよりも早く閻魔女王候補見習いの能力が発揮されてしまいました。」
「都の能力だと。言霊力、トリガーカードのことか?」
「ご名答にございます。さすが、生徒会副会長ですね。」
「生徒会副会長以前に神である。それに副会長というのは神にそぐわしくないぞ。都が会長であることに依存はないのだが。」
「これは失礼しました。訂正いたしましょう。ははは。」
「なにを気楽な。それより都の言霊力について、もっとくわしく説明しろ。」
「承知いたしました。都さんのトリガーカードの属性は、大きく物理系統攻撃・物理系統防御・魔法系統攻撃・魔法系統防御に分かれます。それぞれはスペードカード=美緒さん、ダイヤカード=由梨さん、クローバーカード=絵里華さん、ハードカード=万步さんに割り当てられます。カードは13枚ずつあり、それぞれ違う能力を持ちます。すでに何枚かお持ちですが、これからの生徒会活動の中で、具体的な行動に基づいて、カードを入手できると思います。ご存知でしょうが、全部集めると願いが叶いますので、頑張って集めてください。しかし、ただいまの政宗氏の消滅については、トリガーカードとは別の能力が発揮されたのです。」
「いったいどういうことだ。」
「都さんは閻魔女王いや大王候補です。大王とは唯一無二の至高な存在です。」
「神には劣ると思うが。」
 美緒が珍しくツッコンだ。
「それは個人の趣味でしょう。それは置いといて、大王に対しては、安易な対応は誰しも許されないのです。大王にいきなり自分の愛を告白するというのは、一種の冒涜とみなされるのです。その結果、罰として、そんな行為をなした者がこの世からその存在を消されるのです。」
「ううう。信じられない。でも今それを目の当たりにしてしまったわけか。」
「左様にございます。これは閻魔女王様以外のすべての事物に適用されますので、生徒会のみなさんに置かれましても十分注意してください。くれぐれも都さんには不謹慎な言動をお慎みくださいますようお願いいたします。くくく。」
 李茶土はなぜか、嬉しさを隠せない様子。
「こ、この神が都に恋?あ、ありえん。」((う、うちは都はんの嫁、じゃ、じゃないどす。恋人はフ、フィギュアたちどす。))「な、何言ってるのかしら。セ、セレブには王子様しか見えないんだからねっ。」「・・・・」
 三人はなぜか、言葉に詰まっていたようだが。