小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

INDEX|5ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 


漆黒から現れて、白黒の景色がめまぐるしく姿を変える。夕島が生きて死んだその数だけ、色のない世界が存在している。瑞はそれを目に焼き付ける。夕島柊也という魂が廻って来た光景を。白黒の世界を。

(絶対に報われないとわかっていても…)

それでも足掻いたのだろう。だから死の際に思うのは、悔しい、憎い、といった強烈な感情だったに違いない。やがて魂はどす黒く変質し、悪意の塊が生まれる。

「…極彩色の命なら、よかったのにな…」

変わりゆく景色の中で夕島が呟いた。

赤い空、黒いビル群、灰色の森、白いひまわり畑。
漆黒の海、色のない公園、顔のない子ども達。

夕島の命は、血の色と、死と再生の色だけで彩られている。

やがて景色はすべて消え去り、辺りは夜の森になる。ここは、瑞の魂のスタート地点。幾度も夢に見た、始まりの場所。鏡のような池を挟み、青白い満月の光の下で、瑞は夕島と、己の影と対峙した。

「…ここは、俺が死んだ場所。始まりの場所」
「そうだ。おまえはここで喰われて死んだ。呪われて、使役されて、そしてまたここに戻って来た。始まりの場所であると同時に、再スタートの地でもある」

瑞、と呼びかける夕島の目は虚ろだった。これまで見た、ぎらぎらとした殺意が消え、そこにはもう、諦めや疲弊といった色しかない。

「たくさんの俺、死んだ俺。つもりにつもった憎悪は、死ねばその都度一緒に消えてなくなると思うか?」
「……」
「消えないんだ。俺はもう、その重みに耐えられない…」

どうして俺が。
なんで俺ばっかり。
幸せになりたい。
死にたくない。

幾人分のその無念を、夕島は背負っているのだろう。瑞は改めて、己の罪深さに気づく。