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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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「そうなんです…しかも女の子なのに、ムサシなの」

――あれ?
どうしてこの名前になったんだっけ…。何か理由があったはずなのに、思い出せない…。

梨絵は不可思議な感覚に捉われる。自分がつけたのだっけ、それとも家族?メスのチワワにこんな名前をつけるなんて、自分の感覚ではない違和を感じる。


――もっと賢そうな名前にしたら?


誰かの声が、耳の奥ではなく胸の奥で聞こえた。梨絵はぎゅっと胸元を押さえた。何だろう、この感覚。喪失感のような…。

「どうしたの?」

青年がムサシを抱いてこちらを不思議そうに見ている。

「あ、すみません…何だか、不思議な感じがして…ここに来たら、自分が何か大切なことを忘れているような感覚がして、急に」

おかしなことを言ってしまったとすぐに後悔した梨絵だが、

「それは君の中に、大切だった誰かが眠っているからだよ」
「え」

青年は笑う。

「忘れているのではなく、思い出せないだけ。もらった言葉や温かさは、脳でなく心に残るんだ。喪失感とか、時折感じる不思議な感覚は、その大事だった誰かとの記憶の断片」
「…思い出せない、だけ…?」