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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 前編

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「行っちゃったか~…」

颯馬は、暗い洞窟の中に消えていった瑞の背中が見えなくなってから呟いた。傍らにいた童子はすでに消えており、じっと洞窟の闇を見据えている伊吹と二人きりだ。

「…これで、断ち切れるのかな。全部を」

呟きは不安そうで、しかし颯馬は安易に大丈夫だとは答えられない。何せ、こんなことは四柱様にとっても前代未聞な展開なのだと思う。

「信じるしかないですね」
「うん…」

永かった、というべきなのか。彼らの魂が終着する場所が、ようやく決まるのだ。うまくいけば、夕島を救って、伊吹と瑞の今世は続く。失敗すれば…同じように生まれ続ける悪意が、いずれ二人の人生を蝕むことになる。

「不思議なもんだな…」
「はい?」
「何の変哲もなかった平凡な俺の人生が、こんな壮大な物語だったなんて」

小さく笑いながら伊吹が言った。

「先輩、誰の人生も平凡に見えるけど…その人にとったら壮大な物語ですよ、きっと」

颯馬は答える。きっと誰にとっても、生きるということは物語だ。つらくて苦しくて、だけど喜びがあって。どんな人であっても、みな必死に生きている。

「夕島柊也も同じ。憎しみと悲しみで変質してしまった魂とはいえ、彼にも彼の物語があった。いまも、あるんだ。それを全うできないのは悔しいと思う。だから瑞くんは、助けたいんだよ。罪悪感とか、贖罪とか、勿論そう言う感情があることを否定はしないけど」

そんな言葉で伊吹に語り掛けているうちに、きっと大丈夫だという気がしてきた。

「ここに入るのは伊吹先輩のほうだって、俺はずっと思ってきたけど、違いましたね」
「そういえば…いつだかおまえ言ってたな」
「それはやっぱり、この螺旋の始まりは瑞くんだった、ってことなのかな…。終わらせることが出来るのも…」