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北へふたり旅 36話~40話

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 2018年4月に廃止された種子法は、半世紀前の1952年5月に制定されている。
正式名称は「主要農作物種子法」。
主要農作物とはコメ、麦、大豆などをさし、主にコメを対象にしている。

 第二次世界大戦のさなか、日本は深刻な食糧不足におちいった。
農家は強制的にコメを供出させられた。
種子も政府の統制下になった。
そのため、農家は良質な種子を手にすることができずにいた。

 終戦後。人々の暮らしが落ち着きはじめた頃。
種子用として認められたコメや麦が、統制から除外された。
国の補助金を投入し、安定して農家に供給するために種子法が制定された。

 優良な種子は、国民の食生活に不可欠だ。
公共財として守っていこうという法律がはじめて誕生した。
これが種子法の基本的な考え方。

 農家が自ら生産した作物から種子を採取することは可能。
こうした行為は「自家採種」と呼ばれる。
しかし。同一品種の自家採種を何代も続けると品質が少しずつ劣化していく。

 良質な種子を育成するためには、農作物の栽培とは別に、
種子の育成をしていかなくてはならない。
種子の育成には膨大な手間と金がかかる。
1つの品種を開発するのにおよそ10年、増殖にさらに4年がかかる。

 農家は種子の栽培ではなく、農作物の生産に専念したいと考えている。
種子法をつくり、国民が生きるために欠かせないコメや麦、大豆の種子を
国が管理すると義務づけたのはそのためだ。

 種子の生産を実際におこなっているのは、各都道府県。
日本の国土は南北に長い。土壌、気候などにそれぞれの地域性がある。
そのため生産する品種の認定は、各都道府県に委ねられた。

 種子の生産に携わるのは、各都道府県の農業協同組合(JA)。
農業試験場などの研究機関と採種農家。
国は税金を投入し、運営に必要な予算に責任を持つ。

 地域に適し、普及を目指している優良品種は「奨励品種」と呼ばれている。
こうした品種は、農業試験場などの研究機関がつくりだす。
その種を農業振興公社や種子センターなどの公的機関が栽培し、採種農家が増産する。
生産された奨励品種が、各農家に供給される。
種子法はこうした一連の流れをつくりあげてきた。
こうした流れの中で日本のコメと麦、大豆は守られてきた。


(38)へつづく