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私たちは約2年ぶりの再会だというのに、かつて我々が大都会に多くの夢と希望を見て語り合った居酒屋オゴセで飲んでいた。その店の内装は昔からボロボロで壁にヒビがあり、帰ってくる頃にはそのヒビが店を一周して真っ二つに割れるものばかりだと思っていたが、行く前と何ら変わらずそのヒビは、いや店はまるで私の帰りを待っていたかのように、堪えていた。
店長は昭和のザ・頑固おやじで我々が煙草という紙幣を燃やす悪魔と仲良くなる前からその毒害を吹いていたが、今ではすっかり衰え堕ち、愛孫のために無駄に長生きをするためか、年金を貪ろうとするためか、もしくは店を継いでくれない息子へのあてつけか、ともかく煙草をやめていて、あまつさえ手前は昔餓鬼の前で毒害を吹きかけやがったのにあたかも昔から嫌いです風を装って嫌悪しているらしい。そのため私が店内で煙草を出した瞬間、隣のテーブルに座っていた鬼達磨に叱られた。店長さんたばこお嫌いなんですって、私は別に構わないけどと、自分が嫌いなのに意思を他人に丸投げし他人の代弁者を装った上、受動喫煙のような悪意のない悪意が店内を漂っていた。そういえばあの頃は鬼妻からの現実逃避した老けた男どもの楽園かのように思えたが、今では鬼か達磨かその両方か、飯を味わうためか毒を吐くための舌かわからないが、視認できない副流煙を吐くものが大半を占める店に成り下がった。毒を以て毒を制すとはよく言ったものだととても感心した。
作品名: 作家名:茂野柿