<ガラスと鉄> 病院の坂道 3
「しょうがないな」あたしの屁理屈が効いたのか、裕君の泣きそうな顔に負けたのかはわからないが関さんは吊る場所は私が決めると言って、いかにも安全が最優先な場所に吊ってくれた。
それでもベッドに寝ていても見上げれば見える場所に金魚は泳いでいて、見上げると丸かった身体が細く見えて一層涼しげだった。
心の中でガラスと鉄の風鈴の音が優しく響いた気がした。
裕君は安心したのか、その後すぐに病室を後にした。
あたしはその背中にガラスの風鈴の繊細な音を重ねて聴いていた。
たぶん、あたしの背中には鉄の風鈴の音がするのかもね、と見送った笑顔は少し苦かった。
おわり
作品名:<ガラスと鉄> 病院の坂道 3 作家名:郷田三郎(G3)